元気のないフォード

最近、所謂”コンパクトカー”の部類を色々と試乗して回り、個人的には、Volkswagen GOLF GT TSIが最良、Peugeot 207 GTが次点(だけれども首位とは大差)、という結論に達した。しかし、実は重要な1台のクルマに乗り忘れていることに最近気付いた。Ford Focus STである。
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Fordは、言わずと知れたアメリカの自動車会社であり、世界初の量産大衆車を発売したことや、Mustangに代表される”マッスル・カー”で一 世を風靡し、F1やWRC等のレース活動も積極的に行ってきたことでも有名だ。高い技術力を持つことを、モータースポーツ界に於いて存分に証明済みのエン ジニア集団Ford Team RSが開発を手掛けた市販車が、“Sport Technologies”を表す「ST」の名を冠する、STシリーズだという。エンジン、サスペンション、ブレーキ等を高度な技術でチューニングし、更 には外観や内装の詳細にまで拘った装備を施してある、とカタログ等には謳われている。その中でも特にオヤヂが注目するモデルは、Focus STだ。

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新開発のデュラテック ST 5気筒2.5L DOHCエンジンは、インタークーラー付きターボチャージャーを備え、最高出力 166kW(225ps)/6,000rpm、最大トルクは320N・m(32.6kg-m)/1,600rpm-4,000rpmというスペック。5気 筒、というのが最近では珍しいというだけで、出力の数値だけを見ると、珍しくも何ともない、普通のクルマに近い印象を受ける。しかし、恰も日光見ずして結 構と言うな、の如き表現で、運転して楽しい車というのはこういうクルマのことだ、と何処かのサイトに紹介されていたので、オヤヂは俄然興味を惹かれてし まったのである。我が愛車のAudi RS4こそ、運転して楽しいクルマだと自負しているが、よりコンパクトで軽い車体に、必要充分な出力を備えた車なら、思い通りに走らせることができるだろ うから、やはり運転して楽しい筈である事は容易に想像が付くからだ。

そこで、近所のフォード販売店に出掛けて行った。ところが、店に一歩足を踏み入れてまず感じたのは、雰囲気が暗い!ということ。店員らしき男女は計 4名いたが、恰も店仕舞いの準備にでも勤しんでいるかの如き素振りで、唯一の客であるオヤヂに対しては、軽く会釈をする程度で、殆ど関心を示さない。仕方 がないので、展示車のFocusに勝手に乗り込んだりして視察をしていると、いつの間にか傍らに店員の1人が佇んでいるのに気付いた。暫く待っても向こう からは声を掛けてこないので、こちらから話の口火を切った。「Focusの試乗車はないんですか?」 「申し訳ありません、只今販売員が乗って出てしまっておりまして…。」 「(ホントかぁ〜?)じゃあ、上級モデルのFocus STの試乗車なんて、当然ないですよね?」 「はあ…。あのーぉ、実はヨーロッパ・フォードの車は、現在日本に輸入済みの車両のみで、売り切りになることが決まっておりまして…。」 「(ヌァニィ〜ッ?)えっ、じゃあFocusはもう売って貰えないということですか?」 「…あの、今なら未だ全国のディーラーに何台かストックがあるんですが、新規輸入のご注文は、承っておりません。」 「何故?」 「日本のお客様には、ヨーロッパ・フォードとアメリカ・フォードは事実上の別会社だということを、なかなか認識して戴けないもので、小型のアメ車、という分類になってしまいますと、殆ど売れないのが現状でございます。」 「(欧州Fordの認知度が低いのは、客のせいか?)じゃあ逆に、MustangやExplorerだけなら売り上げが伸びるって事ですか?」 「それは…。」

要するに、店仕舞いの準備をしている風に見えたのは、あながち(半分は)間違いでもなかったようだ。Focus STが実際に素晴らしいクルマなのに売れなかったのだとしたら、何故なのだろう?どんな出来栄えでもそこそこ売れてしまうトヨタ車というのは、何なんだろ う?勿論、オヤヂに答え/結論が出せるような簡単な問題でないことは明らかであるが、フォードもあまりに無策過ぎやしないか?

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