「うわぁー、ブレーキングが遅れたぁ!これじゃコースアウトして雪の壁に突っ込むぞぉ!」と氷上を滑るAudi S5のステアリング・ホイールと夢中で格闘するシーンで目覚めると、時刻は午前7時、場所はKempinski Hotel Airport Münchenの自室のベッドの上だった。今迄の5晩は、時差惚けでいつも午前2時や3時に目覚めていたのに、
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Arvidsjaur, Sweden 5日目(ADE on ICE PRO)
本日の気温は、オヤヂがスウェーデン入りしてから初の氷点下。そして初めての本格的な降雪となった。残念ながら、今日でスウェーデンを離れなければならないが、文字通り最後の悪足掻きとして、午前8時過ぎから約2時間、コース3で精一杯最後の氷上ドリフト走行を楽しんだ。インストラクタのRobからは、丁寧でしかも速さも備わった素晴らしいドライビングだョ、その調子!と賛辞を貰えた。
ギリギリまで氷上走行を楽しんだ後は、慌しくホテルをチェックアウトし、Arvidsjaur空港迄皆でマイクロバスで移動、空港で昼食を食べて、往路と同じAirBerlineに乗って、Hannover経由で夕方München入りした。Münchenでは、これも往路と同じKempinski Hotel Airport Münchenにチェックインし、5日振りの入浴(スウェーデンではずっとシャワーのみ)で心身ともに充分リラックス&リフレッシュを済ませて、やおらホテル傍のレストランへ出掛けた。そこで定番のSausages & Sauerkraut、生野菜サラダ及び生ビールを注文。オヤヂとしては1L(リットル)のジョッキからぐびぐび飲んでプファ~ッ!と行きたかったのだが、素敵な髭面のウェイターがビール1Lの注文は受け付けてくれず、どうしても500mLにしておけと譲らないので、仕方なく500mLで我慢しておいてやった。
が、結果的にはそれで正解だったと思う。ソーセージもサラダも結構なボリュームだったし、生ビールもゆっくりとしか飲めない(急いで飲む気にならない)温度だったから。そう、飲食店で出される生ビールに、日本とドイツ(欧州)との間で決定的な差があるとすれば、それは温度だ。日本のビールは常に凍りそうなくらいキンキンに冷えているが、ドイツのビールは恐らく10℃程度にしか冷やされていない。
そして、屋内が過剰に暖房されていることも殆ど無いので、それ程冷たくないドイツのビールは、暫くの間は出された時の温度の侭で留まっている。そういうビールを、人々はゆっくりと(チビチビと、とも言う)飲みながら、様々な話題で語り合う。オヤヂの観察結果では、300-500mLのジョッキ1杯で30分から1時間が相場かな。恰も喫茶店で珈琲を飲んでいるかの如き雰囲気で、ビールを飲みながら語らう人々を見ると、嗚呼、文化なんだなぁとしみじみ思う。日本の場合は、冷えたビールをゴクゴクと一気に飲む際の「喉越し」を大切にする傾向があるとオヤヂは思うし、オヤヂ自身、冷えたビールの一気飲みは大好きだが、ドイツ人はビールの「味」そのものを楽しみ、ビール(のグラスやジョッキ)を片手に語り合う、というその”スタイル”を大事にしているのだろう。
スウェーデン滞在中にも、ドイツ人たちは皆、ビール片手に大いに語るので、食事の前後の雑談中は、実に多岐に渡る話題で盛り上がり、オヤヂも随分と沢山のことを知った。勿論、殆どはドイツ語での会話なので、オヤヂには理解できないことが多かったが、気が向いたときに誰かが英語に訳してくれたり、最初からオヤヂを仲間に入れて英語で話してくれた時もあったので、彼らの話題の中心が何か、くらいはオヤヂにも大概察しがついた。言うまでもなく、頻度も費やす時間も多いのがクルマの話題だ。これまでAudiが採用し続けてきたトルセン・デフ(Torsen differential; トルセンは元来torque sensingの意味だが、Torsenとしてメーカー/ブランド名になっている)とハルデックス・カップリング(Haldex coupling)による4WD機構はどう違うのか、だの、最近のquattroは前後の基本トルク配分比がF:R=40:60(しかも可変)になって、加速/減速には有利だけれど、昔の50:50の配分比の時の方が4輪ドリフトがやり易かったのか否か、だの、Audi自慢の新機構Sports differentialとLSD (limited slip differential)の違いだの、クルマ(Audi)についての熱い議論が尽きることは無かった。そして、其々の話題の”締め”では、いつでもJanがエンジニア顔負けの膨大且つ詳細な知識を立て板に水の如く流麗に語るのが、酷く印象的だった。Audi Driving Academy Japanの田部雅彦インストラクタ・マスターか、斎藤聡チーフ・インストラクタじゃないと、技術的な”話題”でもJanにはとても太刀打ちできないな。
スマホ、タブレット型コンピュータ、ノート型コンピュータ、デジカメ、etc…、誰かが何れかの電子機器をポケットや鞄から出そうものなら、すぐに皆が群がり、どんなスペックなのかを微に入り細に入りチェックし合うドイツ人たち。あんたら日本でオタクと呼ばれる人種に輪を掛けた病的なオタクだヨ、とオヤヂは半ば呆れて(本当はドン引きして)その様子を眺めていたものだ。
そういえば、インストラクタ達は自らのことも色々と語ってくれた。Janは大学で経済学を専攻したこと(だけれども今の仕事には全く役に立っていない、と彼は苦笑していたけど、大学で学んだことを生かせる仕事に就いている人の方が、一般的には寧ろ珍しいんじゃないの?)、モータースポーツの世界に入る(プロのラリー・ドライバーになる)前は、ハンドボールのゴールキーパーだったこと(高身長な上に屈強そうな体躯な訳だよ)、誰かと同じく結婚には何度も失敗していること、スバル・インプレッサのラリー・カー(’98 WRCグループAホモロゲーション適合仕様車)を所有しているが、時間が巻き戻せるのならその車を買わずに人生を過ごしたいと思っていること、そして今年に入ってレース中の運転ミスでその車が大破し、ファミリーカーが一台買える程高額の修理費が掛かったこと、等々。
一方、もうひとりのインストラクタRobは、スコットランド訛り(?)の英語を使って、彼独特のユーモラスな語り口で、とっておきのエピソードを披露してくれた。米国フロリダ州マイアミで、Lamborghini Gallardo Spyderの発表展示会があった時のこと。1週間以上ホテルに滞在しながら、彼はホテルと展示会場との間を毎日、発表展示用Gallardo Spyderそのものを運転して往復していたそうだが、日を追うごとに彼の”通勤路”の沿道に見物客が増えて来たので、5日目以降は観客へのサービスの為に、ヒール&トウを駆使して目一杯ブリッピングしながら数段シフトダウンを繰り返して減速した後、今度は1速か2速ギアでレヴ・リミット(8,000rpm)迄エンジンを回しながら急加速する、というパフォーマンスを演じてやっていたそうだ。ノリのいいアメリカ人観光客である沿道の人々は、当然拍手喝采だったらしく、いかしたオープン・スポーツカーを転がして注目と喝采を浴びる恍惚感は今も忘れられない、ということだ。
しかし、この話はそれで終わりではない。そのあとRobが、ガラ空きのハイウェーをレンタカーで”ゆったり”と巡航していたところ、何処からともなく突然現れたパトカーに追跡され停止を命じられた。
お巡り「オマエ、時速何マイル出してるんだ!?」
Rob「90マイル(≒146km/h)ですけど何か?」
お巡り「何かじゃない!ハイウェーの制限速度は時速60マイル(≒96km/h)なのを知らんのか?」
Rob「そいつぁ知りませんでした。ドイツじゃこんなの日常茶飯事の速度なもので…。」
お巡り「オマエ、ドイツ人か?」
Rob「いえ、オランダ人です。」
お巡り「…?? い、いいから国際運転免許証を見せろ!」
Rob「そんなもの持っていません。米国とオランダの政府間取り決めで、両国の国民は自国の運転免許証だけで相手国でも自動車を運転してよいことになっているんです。」
お巡り「嘘をつくな! そんなの聞いた事が無いぞ。」
Rob「それは私の責任じゃありません。旦那が無知なだけでしょ。」
腰に挿していた拳銃を抜いたお巡り「なにぃ~、ふざけるな! オマエ、車から降りろ! 両脚を軽く開いてまっすぐに立ち、両手を後ろに回せ!」
こうしてお巡りに逮捕され、警察に連行されてしまったRob。当初は助手席で他人の振りをしながら黙って座っていた奥さんも、警官が怒って怒鳴り始めると半ベソをかき始め、警官が銃を抜いてRobに手錠を掛けた瞬間からは泣き叫んでパニック状態になったようで、流石にRobもこれには慌てたと苦笑いしていた。畢竟、警察からオランダ大使館に連絡が行き、警官の誤解も解けてRobは無事に釈放されたが、何故かブラックリストに載せられてしまい、いまだに米国での自動車運転は禁じられているそうだ。…出だしはどこぞの誰かのエピソードと似ていなくも無いけれど、スゲェな、Rob!
そんな楽しいエピソードを思い返しているうちに、2杯目のビール・ジョッキも空になり、酔いも軽く回ってきた。そろそろホテルの部屋に戻って寝るとするかな。
Arvidsjaur, Sweden 4日目(ADE on ICE PRO)
今日の天候は曇り時々晴れ。気温も零度近いので、コンディションとしては今迄で最高と言える(それでも、氷の表面はびしょびしょで、積もった雪は重たいが)。朝のうちは、肩慣らし(?)としてコース2でドリフト走行を暫し楽しんだ。
その後は、昨日のノック・ダウン形式レースが行われた定常円走行練習場へ移動し、再び瓢箪走行練習。ブレーキ・ポイントとステアリング操作の精度を上げることで、瓢箪の頚を通過する際の”無駄な”ドリフトを極力抑えることができることを、JanとRobが繰り返しコーチしてくれたお陰で、皆のラップはグングン速くなり、1秒以内で鎬を削る争いに。と、ここでお約束のタイム・アタック・レース。定常円の1個の、しかも半円だけを使って、停止状態からスタートし、半円周上を回ってゴールしたら終了、という単純なレースだ。距離が短いので、10分の1秒の争いになったが、オヤヂは0.04秒差で5位に甘んずる結果となった(6位とは0.09秒差)。
昼食後は、昨日同様コース3に場所を移して、再び走行練習を繰り返した後、再びレース。今度は、コース3という最長/最速コースを3周する争いで、結果としてトップと最下位では30秒の差がついた。オヤヂはまた5位に撃沈(4位との差は6秒、6位との差は4秒)。その後は、GPS連動車載ビデオカメラの付いた車で、運転解析/評価。オヤヂは、連続した低速コーナーでは、丁寧な運転操作でタイムを稼いでいるが、中速・高速コーナーの入り口で、ブレーキングが甘い為に減速効率が悪く、結果としてコーナリングでタイムを失っている、という評価がくだった。ABS介入を気にし過ぎて探りながらブレーキを踏む癖が出てしまっているようだ。素直に反省。
その後の走行練習中、またもお世話になってしまったトラクター:かなり遠くに、別の車が飛び出して止まっているのが見えたのだが、それに気を取られているうちに高速コーナー入り口でブレーキングをミスし、自分もコースアウトする羽目になってしまったのだった。畢竟、今日1日を終えて、2回とも5位だったレースとトラクター1回分を合わせて12点を獲得してしまったので、レースは2回とも6位だったがトラクター・ポイントはゼロのChrisと同得点。その結果として、3日間の総合成績もChrisと仲良く同点で5位を分け合って終わった。ま、ビリじゃなかったから良かったし、日本のADE劣等性なんだから所詮こんなもんでしょ(ちょっと負け惜しみだけど)。
明日はいよいよADE on Ice Pro最終日。午前中に2時間程度走行した後は、ホテルをチェックアウトして、スウェーデンを離れなければならない。
Arvidsjaur, Sweden 3日目(ADE on ICE PRO)
本日も、朝のうちは曇りで、後に雨が降り出し、コース・コンディションは相変わらず最悪。それでも、昨日走ったコース1と2を繋げた”新コース”で、午前8時から走行開始だ。
夜間も最低気温が氷点下にならないせいで、氷が融け続けている為か、昨日とはまた違った摩擦係数(μ)になっている上に、水溜りが抵抗になったりするものだから、ドリフト中のスロットル・ワークが難しい。それでも、次第にクルマのコントロールには慣れてきて、それなりに楽しく走れるようにはなってきた。しかも、本日は最初からラップタイム測定をしているので、ドリフト走行を楽しみながらも、1周毎にタイムを確認することで、それなりに効率の良い走りが出来たか否かや、明らかにミスをした場合何秒くらいを失うのか、などが即座に判るので、勉強になる。…などと思いながら、自分なりに巧く走れたと思った周のコントロールラインを通過直後にタイマーを確認していたら、1コーナーのブレーキングが遅れて完璧にコースアウト! 時速50km程度で雪の壁に大きく乗り上げ、”空を飛んで(目撃者証言)”四輪ともが完全に雪に埋まる形で着地するという、派手なパフォーマンスを演じてしまった。お陰で、ドイツ人たちは大喜び。インストラクタ達も含めて全員が写真を撮りに集まって来やがった。偶々単独乗車中だったオヤヂは、独りで車の中に閉じ込められていたので、写真を撮ることは適わず、車中で精一杯おどけながら車中でドイツ人たちの為にポーズを取って、トラクターによる救出を待つしかなかったが、勿論悔しかったし情けなかったなぁ…。
そんな不名誉なパフォーマンスをオヤヂが演じた後は、場所を定常円走行場に移しての走行練習。これまでオヤヂが見たことのある定常円走行場の中では最も巨大なもので、直径20mくらいの巨大なリング状の真円走行路が2つ隣り合わせに並んだ、みごとなサーキットである。そこを瓢箪型に走行しながら、しばし効率の良い走り方を自分で探す練習をする。巨大な定常円なので最初は戸惑ったが、慣れればクルマの鼻先を円の中心に向けて、ほぼゼロカウンター(≒ニュートラル)ステアでドリフト維持をするのは簡単だったが、それだとどうしても走行路の外縁方向に膨らみながら走ることになるので、より速度が必要になるが、速度が上がれば上がるほど大きな円周上を走る形になってしまい、効率は最悪となる。また、瓢箪型に走らなければならないので、瓢箪の頚(括れ)の所ではブレーキング→ステアリングの切り替えし→カウンターステア→揺り戻しで再びドリフト開始、のような走行が必要になるが、外周で速度が上がる程、瓢箪の頚通過も困難になる。従って、畢竟最も効率の良い(ラップタイムを稼げる)走り方は、走行路の内縁に常にクルマを沿わせながら、オーバーステア(≒ドリフト)に持ち込むとしても、ホンの僅かにリア・タイヤが空転するだけで、基本はほぼグリップ走行をしなければならないことが判った。唯一、ドリフトが必須なのは瓢箪の頚での切り返しだけと言っても良い程だ。
それが判ったところで、2人ずつが対戦して速い方が勝ち残ってゆく、ノック・ダウン形式のトーナメント・レース。くじ引きで対戦相手を決めて、瓢箪周回路上を半周ずれて2台が同時にスタートし、2周して早くゴールした方が勝ち。 オヤヂは1回戦は勝って2回戦(準決勝)に進んだが、そこではあえなく敗退。
午後は、走行路をコース3に移して走行練習。オヤヂはコース3があることを初めて知ったが、コース3が最も長くて(と言っても1周3km足らずだが)、最も高速コースであることは、走り始めて直ぐに判った。で、豪快なドリフト走行を暫し楽しんだ後は、再びレース。今度は、1台ずつのタイム・アタックだ。停止状態からスタート後、1周してゴールラインを通過した時点で終了、の単純な形式。オヤヂは、比較的タイトなコーナーでどうしてもリアが流れてしまい(ステアリング操作が大き過ぎたり、ブレーキングが甘かったり、スロットルを開けるのが早かったり、原因は色々だ)、6位(ビリから2番目)と撃沈。
昨日書き忘れたが、総合順位を決定する為の「得点」は、レースの順位がその儘得点になる(1位=1点、7位=7点)のと、トラクターのお世話に1回なる度に2点が加算される仕組みで、最終的に、得点が最も少ない人が総合優勝者となる。午前と午後にそれぞれ1レースずつがあり、レースが行われるのは3日間なので、可能性のある”最低”(=最優秀)得点は、6点だ。一方、トラクターのお世話になる可能性の回数は一応無限大なので、理論的な”最高”得点も無限大である。オヤヂは、昨日も本日も、レースで9点ずつを獲得(3位と6位)し、更に本日はトラクター・ポイントが1回分(2点)加算されたので、合計20点となった。その結果、総合順位は4位に後退。しかも、4位には3人が犇く激戦状態である。
…明日も何とかビリにだけはならないように、頑張ろうっと。
Arvidsjaur, Sweden 2日目(ADE on ICE PRO)
本日は、ADE on Ice Pro in Swedenの2日目だ。ADE in Finlandの朝食と比べると、多少ドイツ寄り雰囲気がする朝食を済ませた後、昨夕決まった”新設”氷上コースに皆で出向いた(飛行機に乗り遅れた[?]らしい3人の不参加が決まったので、総勢7人)。昨夜も雨が降ったようだし、気温は相変わらず高く(+2℃)、朝は止んでいた雨が暫くすると再び降り出したりもしたので、新設コースも昨日のコースよりはマシ、と言えるだけで、畢竟ずぶ濡れだ。
朝イチのカリキュラムは、直線コースにパイロンを等間隔に並べての、所謂quattro dancingの練習だった。要は、普通のパイロン・スラロームではなく、リア・タイヤを常に滑らせ/ドリフトさせて左右のオーバーステアリングを維持しながら、前輪のグリップだけで行きたい方向にクルマを進める技術の習得が目的である。オヤヂは、日本のADEに参加し始めた当初から、quattro dancingが苦手で、今は以前よりも幾らか雰囲気は出せるようになったものの、まだまだ稚拙なドリフトしかできないので、Anthony Hopkins似のオランダ人インストラクタのRob Kunstが、マンツーマンでオヤヂの指導をしてくれた。そのお陰で、少しは様になってきたところで、お約束のタイム・アタックだ。”Who does want to go first?”のJanの声にすかさず反応して、Chrisがオヤヂの背中を押しやがったので、ツルツルの氷面で転びそうになりながら数歩も前に進み出てしまったオヤヂが、否応無しに最初のアタッカーを引き受ける羽目になってしまった。仕方が無いので、Robに教えて貰った通りに、丁寧なスロットル・ワークと優しいブレーキング、そしてグリップ走行よりは少しだけ多目のステアリング操作で、ワルツを頭の中で奏でながらリズミカルにお尻を振りつつ、パイロンを回り込んで行き、ゴール。うん、悪くなかったんじゃない? Robも親指を立てながら頷いてくれたしネ。
ところが、その後にスタートしたMarcoもRalphもその他のどいつもこいつも、皆グリップ走行で普通のパイロン・スラローム風に走りやがっているじゃん? 何だこいつら、汚ぇぞ:そりゃあグリップ走行の方が速いに決まってるじゃんかよ! –そんな訳で、オヤヂの順位はビリから2番目の6位だった。ふーん、そういう訳ね。
その後は昼休み迄たっぷり3時間余り、2コースある周回コースのうちのコース1で、文字通り厭になる程ドリフト走行の練習を繰り返した。皆、昨日からのパートナーに飽き始めたので、パートナーをシャッフルしながらオヤヂも他の参加者のほぼ全員の助手席に乗る機会を得たが、皆本当に巧い! が、オヤヂだって今年の始めにY氏と一緒に女神湖に出かけて定常円旋回が出来るようになったのだっから、タイトなコーナーはゼロカウンターでお尻を振りながら曲がれちゃうし、連続する中規模コーナーは蟹走り(四輪ドリフト)と振り替えしの併せ技で切り抜けられちゃうもんねーッ、というところを一応見せてやったヨ。
そして午後のカリキュラムは、未体験のコース2で、いきなりのタイムア・タックからスタート。インストラクタの先導車に続いてコースを1周した後、再びオヤヂからアタック開始だ。どうせまたドイツ人たちはグリップ走行で攻めるに決まっているので、オヤヂも無駄なドリフトはしないように注意しながら、コーナーは極力小回りするよう心掛けて、周回を終えた結果は2’20″。勿論、その時点では速いのか遅いのか判らなかったが、真剣モードのドイツ人たちのアタックが終わってみると、オヤヂのタイムは3位だった。そりゃそうでしょう、オヤヂだって伊達にサーキット走行をしている訳ではなくて、I選手やS師匠から値千金の教えをみっちり受けて来ているんだから、グリップ走行なら任してよ。
その後は、またひたすら周回練習。合間に、ビデオ連携GPSシステム付きの車両に乗り、助手席のJanからコーチングを受けながらの、運転技量チェックが入る。1周目には、「コーナーからコーナーへは最短距離で行け」「コーナー出口の姿勢作りを入り口から始めておけ」等々、やはり普段からサーキットで師匠たちに教えられていることをJanの口からも繰り返されたが、2周目には先程注意されたところをほぼ解消した走りができたので、”Sehr gut!”とお褒めの言葉を戴けた。しかしこれも出来て当然でしょう、なにしろオヤヂは日本のADEで素晴らしいインストラクタの方々から最高の指導を受けて来ているのだから。お陰様で、今日の終わりには、オヤヂのラップタイムは2分フラット迄向上した。
夕食前には、参加者2人ずつのビデオ&GPSデータに基づくライン取り+速度グラフを並べて比較しながらの反省会。ここで、オヤヂの走行の効率の良さをJanが褒めたものだから、ドイツ人たちの口数が減った。そして極め付けは、夕食後の「本日の総合順位発表」:午前のスラロームで上位だったドイツ人たちは、周回コース走行で結構トラクターのお世話になっているので加算ポイント(概念としては減点)が多いのに対して、スラロームで扱けたもののトラクターのお世話にはなっていない(※コースアウトしても自力で脱出できたことは何度もあったが)オヤヂは加算ポイントが無い為、総合順位でも驚きの3位だったのだ! その結果を受けて明らかに落胆したのを隠さずにいるChrisは、オヤヂと口をきいてくれなくなってしまった。オイオイ、そんなに真剣にならなくてもイインジャネ? そもそも、最初にあんたらが蒔いた種やろ? 何だかオヤヂは針の筵に座らされた気分だ。嗚呼、明日以降が憂鬱 🙁 。
「一番」を決める理由(ADE on ICE PRO)
水浸しの氷上コースでの俄か(予定外)走行練習を終えてホテルに戻り、チェックインを済ませると、お約束(?)のビア・タイム。Audi Japan主催のADE Situation 6 in Finlandでは、走行終了後に直ぐにビールを飲む人は、吉崎シニア・インストラクタ以外では皆無に近い(オヤヂとY氏は例外)が、流石にドイツ人は全員「取り敢えずビール!」状態。ドイツ人、好きやわぁ。
オヤヂは、競争でビリになって劣等感を味わうのが厭なので、晩餐の席でワインの力を借りながら、ちょっとJanに食い下がってみた。「個々の参加者にとって、タイム測定をすることで、タイムの向上=運転技術の向上という、誰にでも判り易い指標ができるので、良い事だとは思う。しかし、参加者同士がタイムを競い合うのには賛同できない。参加者のレベルはまちまちな筈だし、他人より良いタイムを出そうとすることは、現時点での自分のレベルにそぐわない無理な運転をすることに繋がり易いと思うから。」という主旨の意見を言ってみたのである。 するとJanは、オマエの主張は理解に難くない、と切り出しながらも、実に巧妙且つ説得力のある意見を返してきた。彼の主張は、(オヤヂが思うに)以下の2点に集約される。
- 自己(の精神)を厳しく律せよ: タイム測定が絡むと、確かにコースアウトする参加者が急増する。タイムに拘る余り、コーナーでの減速不足に代表されるミスを犯すようになるからである。しかし、我々は日常生活でも常に急かされ、様々な重圧に苛まれながらも、それらのストレスに打ち勝って、冷静に行動し続けることが要求されているのと同様に、氷上の運転でも、タイム測定の如きストレスに負けずに、冷静さを保ちながら常に正確な運転操作をし続けることが基本である。それは即ち、公道での安全運転にも直結する。
- 一番を目指し、一番に習え:全員で競争すると、当然ながら誰か(インストラクタも含めて)が一番になるし、通常は一番は1人に決まる。今回の氷上ドラトレの場合、全員が同じ条件(同じクルマ[Audi S5 Sportback] & 同じコース)で競い合うのだから、一番の人は、その条件下で最も巧く(=速く)運転した人だということになる。そういう意味では、誰もが一番を目指して最善を尽くすことが最高の結果を生む基礎になるし、一番になれなかった人々は一番に習うことで、全員のレベルアップが期待できる。
速く走れることと巧く走れることが同義か否かは議論のあるところかもしれないが、与えられた条件下でとにかく速く走ることが求められた際に、あらゆるコーナーで適切な減速/加速とステアリング操作が要求されるわけだから、やはり巧くないと無理なのだとは思うので、ここは速い=巧いとしておこう。 それより、オヤヂが感心したのは、畢竟誰もが一番なんだよ、などと詭弁めいた甘えた考えで最初から競争を放棄するような、近頃の日本人の多くと違って、集団に於ける健全な競争は、集団全体に良い結果をもたらす、と信ずるドイツ人の真面目さである。う~ん、オヤヂの実力を遥かに超えた”競争”を要求されてしまってはいるが、ここは流れに乗るしかあるまい… :mrgreen:。
ところで、夕食前にスタッフが必死で代替湖(水溜りの少ない凍結湖)を探したところ、氷上走行コースの新規造設が可能な湖が見付かった、ということなので、明日以降のレッスンは予定通り敢行されることになった 🙂 。
Arvidsjaur, Sweden 1日目(ADE on ICE PRO)
朝未だ暗いうち(6:30 AM)にホテルを出て、Audi一色と言ってもいいMünchen空港を後にした。欧州は3月25日(日曜日)から夏時間に切り替わったらしく、1日が1時間早く始まるようになったので、午前6時半は未だ薄暗いのだ。向う先は、Arvidsjaur, Sweden (途中Hannover, Deutschlandで飛行機乗継)である。
合計3時間半程飛行機に乗った後、Arvidsjaurに着いてみると、驚いたことに雨が降っていた! 今年の始めにY氏と女神湖に行った際には、これ以上は望めないという程の絶好のコンディションだったので、オヤヂはこれは幸先イイぞぉ!と思っていたのに、それ以降、天候に恵まれていないなぁ…(泣)。
空港のロビーで、オヤヂと同じ飛行機に乗ってやって来た2m近い身長の大男達(勿論全員ドイツ人)と一緒に、ちょっとTommy Lee Jones似のインストラクタJan Beckerの許に集合し、ホテルに向った。因みに、同じ飛行機にはAMG/Mercedesのドラトレの一行も乗っていて、小さなArvidsjaur空港のロビーは、大盛況だった。
1時間程マイクロバスに揺られてホテル(Hotel Silverhatten)に着くと、荷物をフロントに預けただけでチェックインもせずに、直ぐに氷上サーキット(凍結湖面に作られた運転練習用道路)に出掛けた。本来の予定では、今日は夜に集合して座学と歓迎パーティが催されるだけの筈だったのだが、天候不順(季節ハズレの降雨)でコースコンディションがどんどん悪化しつつあり、季節ハズレの気温の上昇(氷点下が当たり前の地域なのに、本日は+7℃で明日以降も同じ見込み!)も相俟って、明日以降は走行可能かどうかすら怪しい、というとんでもない異常事態なので、急遽予定を変更して、夕暮れ迄の3時間足らずを走行練習に充てることになったのである。
オヤヂは、一番年配(62歳)で一番英語が達者(インストラクタを除いて)なChrisと組んで走行した。事前の警告通り、氷上サーキットのコース全域に渡って水が溜まっていて、氷上というより川内走行という雰囲気であり、アクア(ハイドロ)プレーニングと戦いながら、何か期待していた低μ路走行と違うよね、と2人で文句を言いつつ、それでもクルマ(タイヤ)を意識的に滑らせてコントロールする練習を繰り返した。ドイツ人達は、オヤヂの予想通り皆とても氷上走行が上手で、とにかく速い! オヤヂのパートナーのChrisも、Porsche Carrera Cupのビギナーズ・クラスに参戦しているというだけあって、運転操作が実にスムーズだし、やっぱり速い! 日本のADEの常連さんのなかでもトップクラスと肩を並べられるナ。オヤヂは、日本のADEの劣等生なのに、ヤバイ連中の中に紛れ込んでしまったもんだぜィ(汁)。それでも、Chrisにアドバイスを貰いながらもがき苦しんでいるうちに、2時間後には多少は速度を上げて半ドリフト/半グリップ走行が出来るようになった。何度かスピンは喫したが、トラクターのお世話にはならずに済んだし。一方、Chrisはふとした気の緩みからコースアウトし、一度トラクターのお世話になってしまったのは、オヤヂにとってはちょっと驚きだったが。
何はともあれ、慌しく1日目の短時間走行練習は無事終了。
München到着
Helsinki, Finland経由で、無事にMünchen, Deutschlandに到着した。Helsinkiでは、元々の乗り継ぎ時間が1時間しかなかったのに、成田発のFinnAir (AY 0074便)が1時間近く遅れたのでちょっと焦ったが、
成田-Helsinki間は9時間半、Helsinki-München間は2時間半程の飛行時間だったので、ヨーロッパ迄の飛行時間としては最も短い部類だろうし、ビジネス・クラスでの旅だったので比較的快適だった筈なのだが、何だか疲れたなぁ…。海外旅行が年々辛く感ずるようになりだしてから、早10年以上が経過しているが、いよいよ本当に歳だということか… 😥 。
未だ明るい時間にMünchenに着いたが、明日は早朝(午前8時半)の飛行機でArvidsjaur, Swedenに発たねばならないし、昼に日本を出てから既に12時間以上経っているので、取り敢えずはホテルで入浴して、ビールくらいは飲みに出掛けるか否かを決めるとしよう。食事は、機内食を計3回(Helsinki-München間でもシッカリ出た)ガッツリ食べたので、特に腹は空いていないし、Swedenからの帰り道にもまたMünchenで一泊するので、今夜どうしてもMünchenの夜を満喫しなければならない訳でもないのだ。宿泊場所は、以前にも泊まったことのある、空港内のKempinski Hotel Airport München。オヤヂが独りで泊まるには勿体無いくらい広いベッドの部屋だ。