「一番」を決める理由(ADE on ICE PRO)

水浸しの氷上コースでの俄か(予定外)走行練習を終えてホテルに戻り、チェックインを済ませると、お約束(?)のビア・タイム。Audi Japan主催のADE Situation 6 in Finlandでは、走行終了後に直ぐにビールを飲む人は、吉崎シニア・インストラクタ以外では皆無に近い(オヤヂとY氏は例外)が、流石にドイツ人は全員「取り敢えずビール!」状態。ドイツ人、好きやわぁ。で、ビールで喉の渇きを潤した後に、真面目な座学。内容は、氷上走行基本コースと同じだったので、「上級者(Professional)コースと、基本(Basic)コースとでは、何が違うのか?」という質問がでた。当然だよね。それに対するインストラクタJanの答えは、「上級者コースでは、タイム測定を中心に、参加者が互いに競い合うスタイルのトレーニングが主である。」というものだった。

オヤヂは、競争でビリになって劣等感を味わうのが厭なので、晩餐の席でワインの力を借りながら、ちょっとJanに食い下がってみた。「個々の参加者にとって、タイム測定をすることで、タイムの向上=運転技術の向上という、誰にでも判り易い指標ができるので、良い事だとは思う。しかし、参加者同士がタイムを競い合うのには賛同できない。参加者のレベルはまちまちな筈だし、他人より良いタイムを出そうとすることは、現時点での自分のレベルにそぐわない無理な運転をすることに繋がり易いと思うから。」という主旨の意見を言ってみたのである。 するとJanは、オマエの主張は理解に難くない、と切り出しながらも、実に巧妙且つ説得力のある意見を返してきた。彼の主張は、(オヤヂが思うに)以下の2点に集約される。

  1. 自己(の精神)を厳しく律せよ: タイム測定が絡むと、確かにコースアウトする参加者が急増する。タイムに拘る余り、コーナーでの減速不足に代表されるミスを犯すようになるからである。しかし、我々は日常生活でも常に急かされ、様々な重圧に苛まれながらも、それらのストレスに打ち勝って、冷静に行動し続けることが要求されているのと同様に、氷上の運転でも、タイム測定の如きストレスに負けずに、冷静さを保ちながら常に正確な運転操作をし続けることが基本である。それは即ち、公道での安全運転にも直結する。
  2. 一番を目指し、一番に習え:全員で競争すると、当然ながら誰か(インストラクタも含めて)が一番になるし、通常は一番は1人に決まる。今回の氷上ドラトレの場合、全員が同じ条件(同じクルマ[Audi S5 Sportback] & 同じコース)で競い合うのだから、一番の人は、その条件下で最も巧く(=速く)運転した人だということになる。そういう意味では、誰もが一番を目指して最善を尽くすことが最高の結果を生む基礎になるし、一番になれなかった人々は一番に習うことで、全員のレベルアップが期待できる。

速く走れることと巧く走れることが同義か否かは議論のあるところかもしれないが、与えられた条件下でとにかく速く走ることが求められた際に、あらゆるコーナーで適切な減速/加速とステアリング操作が要求されるわけだから、やはり巧くないと無理なのだとは思うので、ここは速い=巧いとしておこう。 それより、オヤヂが感心したのは、畢竟誰もが一番なんだよ、などと詭弁めいた甘えた考えで最初から競争を放棄するような、近頃の日本人の多くと違って、集団に於ける健全な競争は、集団全体に良い結果をもたらす、と信ずるドイツ人の真面目さである。う~ん、オヤヂの実力を遥かに超えた”競争”を要求されてしまってはいるが、ここは流れに乗るしかあるまい… :mrgreen:。

ところで、夕食前にスタッフが必死で代替湖(水溜りの少ない凍結湖)を探したところ、氷上走行コースの新規造設が可能な湖が見付かった、ということなので、明日以降のレッスンは予定通り敢行されることになった 🙂 。

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