サヨナラ、HONDA

今夜、HONDA Accordが引き取られて行った。ホリエモンが代表だった会社傘下の中古車買取業者に、140万円で売れたからだ。米国から帰国直後に購入し、3年11ヶ月で走行距離30,392kmは決して大きな数字ではない。昨年までは、同時に購入したHONDA S2000と乗り分けていたし、基本的には自転車通勤だったこともあって、”あまり乗らない”という感覚だった為だ。しかし、イイクルマだった。玄関脇のガラス窓越しに見える屋内ガレージの、空になったAccord用駐車スペースが、ふとした瞬間に目に入る度に、意外な程の寂しさを禁じ得ない。

イイクルマ、と書いた言葉に偽りは無い。1990年のNSX登場以来、HONDAエンスー(enthusiast)と化したオヂサン(当時は未だワカモノだったが)は、HONDAの応援のため、また自らのNSXを走らせるために、時間を捻出しては鈴鹿サーキットに通ったものだが、NSX, NSX-Rと乗り継いだ挙句にNSX-Rが盗難の憂き目に会ってからは、幾分HONDA熱も冷めてしまった。折りしもその間、HONDAのF1レース活動を名実共に支えていたAyrton Senna da Silvaが1994年に事故死、それ以前にHONDAは既にF1から撤退していたものの、それでHONDAの時代が本当に終焉を迎えたかの如く、オヂサンには魅力の無い車ばかりを次々と市場に新規投入し続ける会社に成り下がってしまった。HONDAは、ミニバン製造会社へと路線変更したのかと疑いたくなるくらい(いや実際のところ疑う余地は無いだろう)、スポーツ・カー/スポーティ・カーの製造会社だとオヂサンが信じていたHONDAは、何処かへ消えてしまった。

だがその中で、派手さは無いが、しっかりと生息し続けていたのがAccordだ。HONDAの小型車の中ではCivicと並んでずっと旗艦的役割を担ってきた車であり、ワゴンの設定があったり、エンジンやサスペンションに(欧風の?)スポーティな味付けを施したEuro-Rの設定があったりするので、若者達にもそこそこ人気があるようだが、いつの時代にも、革新的とまでは言わないまでもアンチ・トヨタ(非保守)的で一寸スノッブなインテリ中年層の心を擽る車であり続けている気がする。今回もその例に漏れず、内装・外装共にクラスレスな感じである一方、先進技術が多数盛り込まれていて、特に半自動運転装置とでも言うべきホンダ・インテリジェント・ドライバーサポート・システム(HiDS)を4年前にいち早く導入したのは、間違いなく革新的だ。「車速/車間制御機能(IHCC)」と「車線維持支援機能(LKAS)」とから成るHiDSは、近未来のSF映画の世界を実現して見せたような画期的なシステムだが、他メーカーの技術が追いついて来ないために、逆に注目されていないのが残念だ。その他にも、多くのアクティブ/パッシブ・セイフティ機構を数多く備えている点も見逃せない。

しかし何と言っても、オヂサンが最も気に入っていたのは、2.4Lの素晴らしいエンジンと、FFとは思えない自然な操舵感のハンドリングだ。カタログ性能から言えば2.0LのS2000のエンジンの方が上の筈だったが、S2000のエンジンはトルクバンドが高回転域に振られ過ぎていて、低回転域のトルクが細い分扱い難く、逆に低回転域から充分なトルクがあり、しかもそこそこ高回転(7,000rpm)迄小気味良く噴け上がるAccordのエンジンの方が、オヂサンは遥かに好きだ。ハンドリングに関しては、流石にS2000を凌ぐまでには至らないが、ワインディング・ロードでも不満を感じたことはついぞ無かった。

けれども、昨年末にS2000を手放して、代わりにフランス製のカブリオレがガレージに常駐するようになり、今日またイイクルマであるAccordを手放して、HONDAに完全なる別れを告げることになった。その理由は、モットイイクルマに出会ってしまい、そのモットイイクルマ(セダン)が明日、我家にやって来るからに他ならない。

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