左ハンドル仕様の右ハンドル車の弊害

我家に現在ある乗用車は2台とも、図らずも欧州車である。

律儀な日本人が造った乗用車なら、英国圏を除く欧米に輸出されたり現地生産されたりする車の場合、運転席周りの装置・機器類は、少なくともオヤヂの知る限りでは、完全な左ハンドル仕様となっており、右ハンドル仕様の運転席を単に左に移したよう な具合にはなっていないのが普通だ。しかし、日本が欧米から輸入している車の場合、例え右ハンドル車であろうと、運転席周りの機器類は左ハンドル仕様の儘 であるものが殆どだ。これには、需要(販売台数)から見た経済学的理由付けが簡単にできる。要するに、世界的に見て少数派の右ハンドル仕様車のために、わ ざわざ専用部品を開発・製造するのは製造会社にとっては「損」になるから、ということに違いない。だが、ウインカー・レバーやワイパー・スイッチの位置 が、欧州車(左ハンドル仕様の右ハンドル車)と一般的な日本車とで左右逆なのは、慣れてしまえば何ということもなくなる。特に、家にある車の全てが同じ仕 様ならば、車を乗り換える度にスイッチの左右を意識する必要も無いし、いわば「普通」に運転することができる。けれども先日、元来が左ハンドル仕様の右ハ ンドル車に乗る弊害に、初めて気付かされたのだ。 😯 😳

妻のメガーヌ嬢の如きオートマチック・トランスミッションの車や、究極のメカニズムと言われるDSGを含めた所謂パドル・シフト+2ペダル仕様の車 なら、或いは気付かずに終わった事かもしれない。換言すれば、愛車のRS4はマニュアル・トランスミッションだからこそ気付いたことだと言える。その衝撃 の事実とは、こうだ。

オヤヂの通勤路に、最近「バイパス」が開通した。出勤時(往路)には、そのバイパスを通るメリットが殆ど無いことが判っているのだが、復路では交通 量が少なく走り易いので、オヤヂは積極的にそこを走行して帰宅することが多い。しかし、バイパスは最終完成型ではないのか、比較的短路で丁字路として旧道 に交わって終わっている。それでも、加速性能の優れたオヤヂのRS4は、6速でなるべくエンジン回転数を抑えた経済的(高速)走行を1~2分行なった後、 丁字路に差し掛かることになる。交差点を右折する必要のあるオヤヂは、当然減速をして、尚且つギヤは2速まで落とし、同時に右折信号を出しながら、右にス テアリングをきることになる。

ここで、6速で走行するべき速度から、2速で直角に曲がるべき速度まで、減速する時のことを想像して欲しい。特に、交差点に進入する数秒前まで、6 速で定常走行していたとすると、定常速度でほぼ直進している状態から、交差点に進入して実際に車が向きを変え始めるまでの、速度の変化率(=負の加速度。 若しくは減速幅として速度の変化値を見た方が解り易いか?)は著しく大きい筈だ。ここで、普通にブレーキを踏み、右折信号(ウインカー)を出しながら必要 なだけ減速して目標の速度に達したところで、おもむろにシフト・ノブを握ってギヤを6速から2速に入れ換えても、全く問題は無い。しかし、それでは運転の 楽しみが半減してしまう。ブレーキを必要なだけ踏みながら減速するのは基本中の基本として、それに更に段階的な変速機操作(ギヤ・チェンジ)を加えてエン ジンブレーキも併用すると共に、車の向きが変わっている最中にもエンジン回転数が落ちないような適切なギヤ比を選択しつつ、コーナリングの後半ではアクセ ルを踏んで、交差点の出口に向かってスムーズな加速をする、ということができれば、通勤で乗用車を運転する妙味が増す。

「減速しながら変速機操作を行い、エンジン回転数を下げないようにしてコーナーを曲がる」のには、(DSGのような良くできたパドルシフトではなく て)マニュアル・シフトの車の場合、「ヒール・アンド・トウ」という手技を行なうのが、コーナリング(の為の減速操作)の醍醐味を味わう秘訣だ。右足の母 趾側先端(トウ/爪先)でブレーキ・ペダルを踏みながら、左足でクラッチ・ペダルを踏んでクラッチを切り、同時に右足の小趾側/外側の踵に近い部位(ヒー ル)でアクセル・ペダルを踏んでエンジン回転数を上げ、シフト・レバーを左手で操作してギヤを落とし、左足(で踏んでいるクラッチ・ペダル)を上げて行っ て(右足の小趾側のアクセル操作で引き続きエンジン回転数を合わせながら)、クラッチを繋ぎ、アクセルは完全にオフにすることで、エンジンブ・レーキを利 かせる。即ち、右足の踵と爪先を使って、アクセルとブレーキを同時に踏みながら、シフトチェンジをし、減速をする、のがこの手技が「ヒール・アンド・ト ウ」と呼ばれる所以だ。右足の小趾側を動かしてアクセルのオン・オフをしている間、右足の母趾側でブレーキ・ペダルに掛ける力は、できる限り一定に保つこ とが、円滑に減速し続けるためには必須だし、ギヤを一段落とすための一連の操作を1秒程度で行なわないと意味が無い。因みに、DSGでシフト・ダウン(勿 論アップでも同じ)に必要な時間は僅かに0.2秒らしく、素人のマニュアル・シフトではとても勝負にならない。

さて、これで漸く話のポイント(先述の衝撃の事実)に触れることができるのだが、ヒール・アンド・トウを繰り返しながら、6→5→4速…と気持ち良 くシフト・ダウンして行きながら、程よく速度も落ちてきたし、ウインカーを出そう、と思った時に、シフト・ノブを握りながら更に4→3→2速へと連続的な 変速操作を行なっている真っ最中の左手では、ウインカー・レバーの操作ができないことに気付いた。元来右ハンドル仕様の日本車なら、ステアリング・カラム の右側にウインカー・レバーが付いているので、左手でシフト・レバーを操作しながらでもウインカーのスイッチを入れることが可能だが、左ハンドル仕様の右 ハンドル車では、シフト・レバーとウインカー・レバーが同じ左側に位置している為、同時操作が不可能となってしまうわけだ。言うまでも無く、本来の仕様ど おりの左ハンドル車なら、右手でシフト操作をする訳だから、左手でウインカー操作をするのは必定なのだが。

勿論、必要以上にスピードを出さず、一般道の交差点でわざわざヒール・アンド・トウを繰り返しながら減速・旋回することを試みたりしなければ、全く 問題にならないし、場合によっては、多少早めに(交差点の数百メートル手前から)ウインカーを出し始めるという、お間抜けな操作をまずやっておいた上で、 次いで左手には変速操作に専念させる、という気にさえなれば済む、些細な事象だ。けれども、神経質なオヤヂにとっては、気になり出すと結構気になる、忌々 しき問題なのである。次に欧州車を購入することがあったら、やはり、パドル・シフト付きの車種を選択せざるを得ないか?

左ハンドル仕様の右ハンドル車の弊害」への2件のフィードバック

  1. RS4素敵ですね。僕の大先輩が、M3からRS4に買い換えたときに、少し見せていただいたことがあります。
    僕も丁度買い替えの時期ですが、超廉価版のTTか三代目の3シリーズかで迷ってます。まあ、お家の支払いが次々と増加しているので、無理かもなんですが。
    なんか、通勤路の右コーナーを曲がるときのお話は、よしくんの話し方と文章がすごく似てるので、面白い感じでした。ところで、シフトダウン時に回転数を合わせるのが楽しくコーナーを曲がるポイントだと僕も思います。しかし、一速ずつギアを落とすのは、大排気量車だと少し大変そうですね。

  2. ゆうたさん、コメントを有難うございました。Audi TTかBMW 3xxかで迷っていらっしゃるとのことですが、小生としてはAudi仲間になれることを望んでおります。

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