先日のGrand Hyatt TokyoでのNew Audi A4 (B8) の発表会では、試乗も可能だったようだが、オヤヂは試乗無しで帰って来た。すると、今週末には試乗車がオヤヂの馴染みのディーラ (B7 RS4の購入先) に配備済み、というお知らせが届いたので、妻と一緒に試乗に出掛けた。
ディーラに到着すると、オヤヂ担当のM氏が、爽快感漂ういつもの笑顔で我々夫婦を出迎えてくれた。そして、「A4 1.8 TFSI, A4 3.2 FSI quattro, それにA5 3.2 FSI quattro Sportslineの用意がございますが、何れからお乗りになりますか？」と訊かれた。オヤヂはS5 (4.2 FSI quattro) には昨年の夏にドイツで乗ってしまっているので、その下位グレードのA5は推して知るべし、という気でいたし、先代 (B7) A4に比べて大柄になった車体に、過給機付きとはいえ1.8Lのコンパクト・エンジンでは、些か荷が重過ぎる懸念のあるA4 1.8 TFSIも敬遠したかった。そんな理由で、殆ど迷わずにA4 3.2 FSI quattroを選び、運転席に乗り込んだ。
オヤヂは既に、Grand Hyatt TokyoでNew A4の実車に触れているから、今更新鮮な驚きや歓びはなかったが、妻は初めて見るA4に、それなりの感動を覚えたようだ。とは言っても、New A4はA5 (Coupe)のSedan版という感じだし、S5には妻も昨年乗っているし、A5/S5やNew A4の内装は、現行A6に類似なのも周知の事実なので、要するに妻も「ふ～ん、確かに豪華になったね。それに広いね。」という程度の感想を口にしただけだった。
New A4のエンジンをかけて走り始めた瞬間に我々夫婦が口を揃えて発した言葉は、｢静かだね！」だった。先代A4 3.2 FSI quattroには、昨年2月のAudi Driving Experience @女神湖で乗っているので、基本的には同じエンジンを積んだ両者の違いは、我々にもよく判った。しかも、これまではS8に標準装備／A8にはオプション装備と、最上級グレードでしか入手不可能だったBang & Olufsenのオーディオが、僅か15万円のオプション料金で入手可能だそうで、試乗車にもB&Oが備わっていたが、スピーカーから流れてくるジャズ・ピアノの澄んだ音に聞き惚れることを充分に許してくれる、素晴らしい静寂性だった。
しかし、良かったのはそれだけで、結論としてA4 3.2 quattroは至極平凡なクルマだった。いや、それは表現として不適切かもしれない。全てにおいて優等生なので、逆に傑出した良さを見出し難くなってしまっている、と言うべきか。先代までのA4に比べれば勿論のこと、R8を除く他のどのモデルのAudi車よりも、エンジン搭載位置を前輪の車軸に対して後退させることに成功したことで、新型A4は過去最高と評されるハンドリングを手に入れたらしい。しかし、オヤヂが試乗した際に感じた限りでは、アシスト量過多のサーボトロニック・パワーステアリングのせいで、そのベスト・ハンドリングが相当スポイルされてしまっている気がした。ステアリングを通して運転者の手に伝わってくる情報量が、極端に少ない気がしたのだ。三十数万円のオプション料金を払ってダイナミックステアリングを装着すれば、その点はだいぶ改善されるらしいが、何故それ程もったいぶるかね？
結局、試乗の結果A4 3.2 FSI quattroがやや期待外れだった気がしたので、同じシャーシ+エンジンのA5に急に興味が湧いてしまい、A5にも試乗させて貰うことにした。A5はSportline仕様ということで、多少S5に近い設定になっていたせいか、兄弟車とは思えない程にA4とは異なるクルマであり、A4よりも断然オヤヂの好みに合った乗り味だった。運転していたオヤヂのみではなく、助手席に乗っていた妻までもが、A5の方がずっといいと思ったらしく、下手をすると其の侭A5を注文しそうな勢いで褒めていた。A4はオーディオしか褒めなくなってしまったくせに。更には、先日試乗したBMW 135iの内装がA5に比べて貧弱だったことにも触れて、やっぱりBMWよりAudiだ、とまで言い始めた。確かに妻の言うことはあながち的外れではないと思うが、クルマの価値は、内装やちょっとした乗り心地だけで決まるわけではない。BMW 135iには、カタログの数値や見掛けの豪華さ等には現れない、もっと感覚や感情に訴えてくる素晴らしさがある。BMW 135iは、自動車の運転という行為そのものに悦びを感じさせてくれる、稀有なクルマの1つだ。勿論、Audi RS4は更に一段上の悦楽の世界へオヤヂを誘ってくれるけれど。
話がやや脇道に逸れたが、結論： New A4、日本で”も”売れるといいネ…。