やってしまいました、オーバー・レブ…

本日は、Porsche 911 (997前期型) GT3 RSで富士スピードウェイ (FSW) のスポーツ走行に行ってきた。オヤヂは、GT3 RSでのFSW走行は初めてなので、安心して走行することができるように、(有) Adenauに「サーキット・サポート」を依頼した。プロのメカニックの方が1人同行して、走行前・(中)・後の車両のチェックをして貰えるし、車載ビデオやデータ・ロガー(ドリフトBOX)なども貸与・搭載して貰えるという、万全のサポート体制でサーキット走行を楽しむことができるようになる。その上、社長の密山祥吾さん自らがステアリングを握って「デモンストレーション/テスト走行」をしてくださるので、あとで密山さんの走行ビデオを観ながら、FSWの攻略ポイントを解説して戴けるし、密山さんの走行データと自分のデータを比較することで、自分の課題の理解度を深めることもできる、至れり尽くせりの贅沢なプログラムなのだ。

密山さんは、Team TAISAN(チーム・タイサン)の51号車(996ベースのSabelt CINE CITTA’タイサンポルシェ)で、坂本雄也選手と一緒にSUPER GTを戦っている、現役のレーシング・ドライバーである。その密山選手が、自分のクルマのステアリングを握り、FSWを走ってくれるのだから、オヤヂはもう大興奮。最近では、サーキット走行にも少々慣れてきて、走行前夜も緊張や興奮で寝付けないということは減ってきたオヤヂだが、昨夜はなかなか寝付けなかった。オヤヂはGT3 RSでのFSW走行が初ということで、不安だったせいも多分にあるとは思うが…。

午前10時から走行を開始し、間に1時間ずつの休憩を挟みながら、30分の走行枠を計3本(実は午後の1本だけ50分の長時間枠!)、走る計画を立てた。そしてまず1本目に、車両のコンディションとポテンシャルのチェックを兼ねたデモ走行を、密山さんにお願いした。アウト・ラップとイン・ラップを含めて3周した後、空気圧チェックの為にピットインして来た密山さんは、車両の素性の良さと、何よりもタイヤ(新品のPirelli P-Zero Trofeo)のグリップの高さを褒めまくり、再びコース・イン。殆どガラ空きのサーキットであっさりと1分56秒台のタイムをマークしながら順調に周回を重ね、走行時間枠を使い切る前にピットインして、取り敢えずは1本目の走行終了。この季節に余裕で56秒台のラップタイムが出るとは驚きだと密山さんご自身も仰っていたが、あまりの速さにオヤヂは言葉を失い、緊張感がドッと高まる。

最初から色々と先入観を持ち過ぎないようにと、密山さんの走行データ解析は後回しにして、車載ビデオ映像をチラッと観た程度で、いよいよオヤヂの走行だ。ピークに達した緊張を何とか誤魔化しながら、慎重にコースイン。ゆっくり目にアウト・ラップを周り、最終コーナーを立ち上がってホームストレートに入ったところで、ガス・ペダルを床まで踏み込む。2→3→4速ギアへとシフト・アップしながらコントロールラインを通過し、更に5→6速までシフト・アップ。速度は240km/hにも満たない。Lamborghini Gallardo LP560-4の暴力的な加速に慣れているオヤヂとしては、加速感の乏しさと最高速の低さに少々落胆しつつ、250m看板でブレーキング開始。精一杯頑張ってヒール & トウを駆使しながら6→5→4→3→2速ギアへとシフトダウンしながら減速。なんだ、かなり余裕で止まれるじゃん?

1・2コーナーを回って下りのストレートでフル・スロットル。4速ギアまでシフト・アップした後、コカコーラ・コーナー手前で減速しながら3速ギアにシフト・ダウン。緩やかに左に旋回したら、100Rへの飛込みだ。こ、怖くて全くガス・ペダルが踏めない。オドオドしながら右旋回をしていると、何となくヘアピン・コーナーが近付いて来てしまったので、一応(更に)減速して2速にシフト・ダウン。左に旋回したら、ガス・ペダルをジワッと踏み込む。その瞬間、リア・タイヤがズルッと滑った。お、おっとっと、まだ向きが変わり切っていないのに加速しようとしちゃ駄目ジャン!…と自分に言い聞かせながら、2→3速へとシフト・アップしながら300Rに突入。ここも怖くてスロットル全開にできない侭に、4速迄シフト・アップ。そうこうするうちにダンロップ・コーナーへ。フル・ブレーキング + ヒール & トウで4→3→2速へシフト・ダウンし、右へ左へのスラローム。加速しながら3速へシフトアップするも、失速気味になりながら第13コーナーへ。軽くブレーキ・ペダルを踏んだ後、右旋回したら上りの最終セクションだ。ライン取りに不安を覚えながら、プリウス・コーナーを左に曲がったら、いよいよ最終コーナーだ。どこを走ってよいのか、相変わらず解っていない侭に、”テキトー”に右旋回を終え、ホームストレートでフル・スロットル。んー、やっぱり加速が物足りない。シフトアップしながらコントロール・ラインを通過すると、ラップ・タイムは2分05秒弱。こんなんじゃ全然駄目だな。

次の周回はもう少し頑張って走り、2分3秒台に入ったところで、ピット・イン。タイヤの空気圧調整を受けながら、密山さんからのアドバイスを聞いた:ホームストレートでは、6速ギアは不要で、5速までのシフト・アップで止めていいのと、ストレート・エンドのブレーキはあと50m我慢して、250m看板でガス・ペダルから足を離し、200m看板でブレーキング開始でいいでしょう、との事だった。その後、オヤヂは6周回したが、かなり必死に頑張っても2分1秒台を2回記録するのがやっとだった。

タイヤは本当に鬼グリップという感じで、オヤヂの走行ペースでは、全く何も起きない。逆に、きちんと暖まったこのタイヤのグリップが少しだけ破綻しかかるくらいの感じでコーナー(特に100Rと最終セクション)を攻められなければ、更なるタイム・アップは望めないということか?いやいや、密山さんの走行ビデオ映像をみると、まだまだ余裕をぶっこいて走っているもんなぁ…。となると、攻める、というのはもっともっと高次元の話だということになる。まあ、とにかくオヤヂにはまだまだ精進あるのみ、だ。

昼休みの間に、密山さんとオヤヂの走行データ比較をしてみると、100Rが全然踏めていないのは勿論だが、ダンロップ・コーナー以降の最終セクションが断然遅いのが明らかだったので、ダンロップから第13コーナー、プリウスからパナソニック・コーナーの走り方を、かなり詳細に解説して戴いた。これまで、どこをどう走ったらいいのか解らぬ侭に我流で走行していたオヤヂとしては、山積していた疑問点のうちの大部分が一気に解決した感じで、かなり晴れ晴れとした気持ちになれた程、値千金の密山さんのレクチャーだった。

こうして気持ちを新たにして臨んだ午後の走行。事件はこの時、起きてしまった。密山さんに再びクルマのドライバビリティをチェックして戴いて、「とにかく、シッカリ止まり、向きを変え、向きが変わり切る迄じっと我慢したら、シッカリ加速、ですよぉ!」というアドバイスを背中に聞きながら、オヤヂはピット・アウト。コースは、基本的には相変わらずガラ空き状態だったのだが、運悪く数少ない他車が比較的固まって走っているところに入り込んでしまい、なかなかクリア・ラップが取れない。2分04秒台、2分02秒台で走った後、漸く前方の視界が開けたので、頑張ってアタック!1周して戻ってくると、再び前方の視界に他車が現れてしまった。この侭では、あの日産シルビアに1コーナー迄に追いついてしまうなぁ…、と思いつつ、何気なくシフト・アップ操作をしていると、突然、ガガガギャウゥンッ!ともの凄い音がして、オヤヂのGT3 RSは失速。ステアリング・カラム上に装備されたデータ・ロガーのレブ警告灯が真っ赤に点灯・点滅し続ける。シフト・ミスに起因するオーバー・レブだ!嗚呼、やってしまった。4→5速ギアにシフト・アップすべきところを、加速しながら逆に3速ギアへとシフト・ダウンしてしまった上に、クラッチをしっかり繋いでしまったのだ。その結果、エンジン回転数が無理矢理急に跳ね上がり、もの凄いエンジン音になると共に、高回転に耐え切れなくなったクラッチが滑り、轟音と共に壊れてしまったのであろう。その直後、何とか4速ギアには捩じ込むことができたのだが、以降はクラッチが切れなくなり、従ってシフトチェンジも不能になったので、4速ホールドの侭で1周回し、ピット・イン。その後の走行は不能となり、Adenau迄の積載車による搬送を依頼しなければならなくなってしまった。


クルマが壊れる直前が、畢竟この日のオヤヂのベスト・ラップ (2分00秒241) だったので、密山さんのベスト・ラップ (1分56秒332) との比較グラフを、以下のリンクに掲載しておく。

GT3RS@FSW走行データ (ここをクリックするとご覧になれます)  ※お使いのブラウザにPDF閲覧ソフト(例: Adobe Reader)が連動していることが必要です。

グラフ上段は、横軸がコントロールラインからの距離、縦軸が速度である。線が密山さん、線がオヤヂの走行データだ。グラフ下段は、密山さんのラップ・タイムを基準としたオヤヂのラップ遅れ(秒)をプロットしてある。これを見ると、ホームストレート・エンドのブレーキング・ポイントは、ほぼ同じで、オヤヂは教えられた通りにガス・ペダルから足を離して一呼吸置いてからブレーキングを開始しているのも判るし、減速距離/時間もほぼ同じで、1・2コーナーを旋回し終わる迄に、オヤヂがちょっと我慢し切れずにスロットルを開け始めてしまっている為、その後の下りストレートで逆に遅れが出始めてしまっている点以外は、コカコーラ・コーナーまでは密山さんとオヤヂは殆ど差が無く、なかなかいい感じなのが見て取れる。

ところが、コカコーラ・コーナーの向きの変え方がオヤヂはだらだらしている為か、密山さんの方が、スロットルを開けるのがずっと早い。その結果として、100Rの進入までの加速が全く違い、進入速度に大きな開きができてしまっている。そして、オヤヂは100Rは怖くて踏めないので、100Rの出口(ヘアピン・コーナーの侵入)迄に約2秒の差がついてしまっているのだ。ヘアピンの進入(ブレーキング)から、300Rへ向けての立上がりはまずまずだが、300Rでもオヤヂはビビッて一瞬スロットルを戻し気味にしてしまっているので加速/最高速が違うため、差は更に広がっている。続くダンロップへのアプローチと抜けはまずまず巧く行っているし、最終セクションも下手糞なりにそれ程差が広がらずに済んではいるが、最終コーナーの立ち上がりが下手なので、ここでダメ押しの差が付き、終わってみると凡そ4秒近い大差が付いている、という仕組みだ。因みに、グラフの最後で赤線が下向きになっている(減速している)のは、オヤヂがクルマを壊したからである。

しかし、やっぱりPorsche 911 GT3 RSって凄いね。ホームストレート・エンドの最高速は、Lamborghini Gallardo LP560-4より40 km/h近くも遅いのに、オヤヂが運転する両車のベスト・ラップ@FSWの差は、1秒以内だもの…!

ま、そんな訳で、オヤヂのPorsche 911 GT3 RSは、今日から暫くAdenauに入院することになった。車両の検証はお盆休み明けになるようで、修理開始は更にその後だ。ダメージがなるべく軽いことを祈るばかりである。

やってしまいました、オーバー・レブ…」への2件のフィードバック

  1. よしくんさんのドライビングテクニックも益々磨きがかかってますね。
    し、しかしですよGT3RSが… ガクガク
    なんとなく私も似た経験をした事が有るのですが エンジン回転数と車速が上がった状況でのシフトミスはかなり痛いですね。
    こういう場合での修理工場様の腕の見せ所だと考えます。

    1. TM3さん、
      おはようございます。こだまさんやk7_さんの反応は、”ああ、この人達は、日本経済を本当の意味で支えている(操っている?)、ほんの一握りの集団の仲間なんだな”と思わずにはいられない、あらゆる意味で「余裕」を感じさせられる内容でしたが、TM3さんの反応は、もう少し小生側と申しましょうか、普通の日本国民的なので、好感が持てます(笑)。
      ま、とにかくやってしまったことは仕方が無いので、次から気をつけるしかありません。次(=修理を完了させるだけの経済力)が本当にあれば、の話ですが…。

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