嗚呼、我入恥!

オヤヂの平日の昼食は、毎回所謂”職員弁当”である。それを職員食堂で食べている。弁当は、職場の近所の仕出し料理屋が運んでくるもので、おかずとご飯(白米)が各々別々のプラスチック容器に詰められているので、オヤヂは、食堂入口の弁当置き場からおかずの箱とご飯の箱とを取り、それらを2段重ねにし、更にその上に割り箸を重ねて、空いている席(テーブル+椅子)に座って食べる、という生活を毎日の昼に繰り返しているのだ。

ところが、本日昼の弁当は、いつもと少し、違っていた。いつも通りのプラスチック容器に入ったおかずとご飯以外に、茶碗蒸しが加わっていたのである。茶碗蒸しは、蓋付の湯飲茶碗の如き、所謂茶碗蒸専用の陶器に入れられていたので、オヤヂは2段重ねの弁当箱の上に、割り箸と共にその茶碗蒸容器を3段重ねにして空席まで運び、総てを平らげた。最近(僅かだが)スリムになったオヤヂは、普段よりも一品多く、その分カロリーも高くなっているであろう弁当でも、残さず食べきるだけの余裕があった。

弁当をきれいに食べ終えたオヤヂは、空の容器を再び3段重ねにして、食堂外の廊下にある空容器収容トレイに返すべく、食堂出入り口の扉を通ろうとした。時刻は正午を少し過ぎたところだったので、その時の食堂は、オヤヂ同様に昼食を摂りに訪れた多くの職員でごった返していた。そして、食堂出入り口の扉付近もまた、昼食を食べ終えて出て行く者と、これから食べに入って来る者とが交錯して、歩き難い状態だった。空になった、けれども不安定な、3段重ねの弁当箱を自分の体の前方に両手で捧げ持つオヤヂは、擦れ違う他の職員達を腰を捻って避けながら、その”狭き門”を通り抜けようとした。が、運悪く、誰かの肘が茶碗蒸し容器に触れたようで、オヤヂが捧げ持つ3段重ねの空容器の頂点に君臨していた茶碗蒸し容器がぐらっ傾き掛けたのが見えた。そして、アッと思ったオヤヂが慌てて容器を押さえようとした時には既に全てが終わっていた: 陶製の茶碗蒸し容器は、オヤヂの目の前で緩やかに床へと落下し、見事に粉々に砕け散ったのだ。

その「カシャアァーン!」という、乾いていて甲高く、必要以上に大音量の、独特の衝撃音が大勢の職員でごった返す昼休みの食堂に鳴り響いた瞬間、喧騒に溢れていたその空間は、即座に、文字通り水を打ったようにシーンと静まり返った。恐らくは数秒の、しかしオヤヂには1分間にも感じられる程に長かった静寂が終わり、職員食堂に再び喧騒が戻った頃には、近くにいた女性職員の何人かが、既に割れた陶器を片付け初めてくれていたし、掃除用具を携えた施設課の男性職員も驚く程の速さで何処からともなく現れてくれたので、粉砕された陶器の片付けは、程無くして終わった。片付ける際の手間を考えると、容器が空だったのは幸いだった。

しかし、その一瞬の出来事は、妙に恥ずかしかったぁ! 😳  勿論、自らの不始末の後片付けには、オヤヂも積極的に加わっていたので、他の職員の様子を観察する余裕は無かったが、月並みな表現ながら、皆の視線が背中に突き刺さって痛いような気がしていた。面の皮は比較的厚い方だと自負してはいるが、その時のオヤヂは、赤面していたに違いない。今後は、もしも一品余計に料理が付いていたとしても、特にそれが陶器に入れられている場合には、食べるのをやめておくとしよう。その方がダイエットにもなるし。 :mrgreen:

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