初日の氷上運転訓練終了(@フィンランド)


本日は、Laplandの凍結湖上での氷上ドライビング・レッスン初日だ。朝食を食べ、カリキュラムの内容説明や(氷上)ドライビングの基本(“イロハ”)についての簡単な講義を受けた後、いよいよ湖に向けて出発!

凍結した湖の「上」に到着したら、早速走行練習開始だ。摩擦係数(μ)の極端に低い氷上では、普通にステアリングを切ってタイヤの向きを変えただけでは、カーブを巧く曲がることはできない。タイヤ(前輪)が滑ってしまって、ステアリングを切った量に見合った方向に進まず、直進し続けようとしてしまう。所謂、「アンダーステア」の状態だ。この状況をなるべく解消すべく、まずはステアリングを切ったら、車が向きを変え始めてくれるように、前輪が滑りにくい状態を意図的に作り出してやる運転技術が必要になる訳だ。それが即ち、荷重移動である。スロットルをオフにする、もしくはブレーキを掛ける、の何れかで、車が前に”つんのめる”形を作り出してやることで、前輪に掛かる荷重が増え(=荷重とミューの積である摩擦「力」が増し)、ステアリングを切った結果に車が反応し易くなる(=曲がり始め易くなる)。

しかし、それだけでは実際には未だ、氷上の車はカーブを巧く曲がってくれない。曲がり易くはなっても、極端な低μ路では、依然としてアンダーステア状態は続いてしまうのだ。ではどうするか? 前輪への荷重移動で、車がステアリング操作に多少反応するようになり、曲がる”きっかけ”を作ってやったら、今度は意図的に後輪を滑らせながらカーブの外側に押し出して(流して)やるのだ。所謂、「オーバーステア」の状態迄、車を意図的に持って行く;そうすることで、車(の鼻先)は急に向きを変え始めるのである。幸い、氷上の如き極端な低μ路では、前輪に荷重が移っている状態、即ち後輪の加重は抜けている状態で、ステアリングを切ることで車が向きを変え始めると、その儘待つだけで後輪が滑り出し、慣性の法則に従ってカーブの外側に流れ始めるので、自然にオーバーステア状態になり易い。もしも自然に後輪が流れ始めなければ、軽くスロットルを開けて後輪を回転させてやることで、後輪の摩擦力を下げられる(なぜなら静止摩擦係数よりも動摩擦係数の方が低いから)ので、後輪は流れ出す。

けれども、ここまででも未だ、車は運転者が最終的に進みたい方向には進んでくれない。オーバーステア状態が持続した儘では、やがて車の向きは変わり過ぎてしまい、所謂「スピン」状態に入ろうとしてしまう。それを防止する(打ち消す)為にはどうするか? 今度は、先程までとは逆方向にステアリングを切って、再度車の向きを変えてやるのだ。所謂「カウンターステア」を当てる、という奴だ。加えて、適度にスロットルを開け(たり閉めたりを繰り返し)、後輪の滑り具合や前後の荷重移動を調節することで、車は四輪を滑らせながらも、運転者が曲がりたい方向に進んでくれることになる。所謂「ドリフト」状態で格好良くカーブを走り抜ける訳だ。

このドリフトを、様々な曲率や長さのカーブに合わせて、連続してスムーズに行いながら、いつまでも走り続けられるようにするのが、Audi Driving Experience Situation 6の最大の目的である。蛇の如くクネクネとうねる、左右交互の連続したカーブでは、最初のカーブをドリフトしながら抜けた直後に、今度は直ぐに反対向きにドリフトを始めなければならないので、一度直進しながら体制を立て直す時間は無く、寧ろ、最初のカーブを抜け切った瞬間の反動(“揺り戻し”)で、反対側に車の向きを変えるきっかけを作る、というような感じの運転になる。ひらり、ひらり、ひらり、或いはひょい、ひょい、ひょい…と左右に体を傾けながら、障害物を避けるようにして進んで行くイメージだ。昨年のオヤヂは、この揺り戻しを使ったドリフト走行が全くできなかったが、今年は何とかできる(ことがある)ようになったのが、自分で感じられた進歩かなぁ。では、ドリフトに失敗するとどうなるか? カーブを曲がりきれずにコースの外側に飛び出してしまう、或いは、スピンしてカーブの内側に突っ込んでしまうと、そこにはふかふかの雪の”壁”が待っていて、雪壁に深く突っ込んだ際には、車は自力で動けなく(=脱出できなく)なってしまう。そんな時には、トラクターが出動して、牽引ロープで車を雪壁中から引っ張り出してくれる。そして救助を受けた記念にと、運転者の名札(プラスチック製)に、1回の救助毎に1個、パンチで穴を開けてくれるのである。オヤヂは本日、この有り難い穴を、3個も開けて貰ってしまった。

楽しい氷上走行を、文字通り朝から晩(夕暮れ前)迄堪能した後は、ホテルの自室でサウナに入り、シャワーを浴びて、夕食だ。おっと、その前に「こだま」さんとビールを片手に本日の走行の反省会をしなきゃ。

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