女神湖氷上走行

本日は、友人のY氏と共に、長野県蓼科の女神湖の凍結湖面上で、乗用車の氷上フリー走行に参加した。現地では、特に示し合わせていた訳ではないが、女神湖氷上走行風景Audi Driving Experience (ADE)で何度もご一緒させて頂いたことのある、”ジャイアン”T氏や、髭が素敵な大阪のT氏、そしてADEスタッフでお馴染みのM氏も氷上走行に参加なさっており、今シーズンは(冬期)開催の無いADEのプチ同窓会の如き様相を呈した。

Y氏と一緒に氷上走行をするのは、昨年のAudi Driving Experience (ADE) Situation 6 in Finland (Lapland)以来だ。Laplandでは、2人1組で1台のAudi S5 Sportsbackを運転して氷上ドラトレに励んだのだが、本来は参加メンバー(総勢10人)の”色々な面子”と組んで切磋琢磨し合うたてまえなのに、正味丸3日間、オヤヂは殆どずっとY氏と組んで走っていたっけ…。お陰で、ADE常連さんの中でもトップクラスのY氏の妙技を好きなだけ”観察”することができたし、オヤヂの下手糞な走りに対してY氏から有益なアドバイスを山程受けることができたので、(自分で言うのは少々憚られるが)オヤヂの運転技術は長足の進歩を遂げた。

今回は、僅か一日だけ、しかもLaplandとは全く比べ物にならない小規模な女神湖でのドラトレだが、愉しかったLaplandの思い出がそれなりに蘇って来て、そこそこ雰囲気は味わえた。Y氏もオヤヂも、手持ちの乗用車で氷上走行に適したものが無い(車種とタイヤの何れか、もしくは両方の理由で)ので、SUBARU Legacy Touring Wagon (年式やグレード等の詳細不明[興味の無い車種には弱いのだ…{汁}]) を大手のレンタカー屋で借りた上で、2人で1台を共有する体制で女神湖に乗り込んだ。従って、形式上ADE@Laplandと同じ体制だったわけで、それも思い出を蘇らせる演出として一役買っていたのに違いない。

ところで、近頃の乗用車には、ハイテク安全装置/機構が色々と備わっていることが多い。その中でも今回のテーマで重要となるのが、所謂「横滑り防止装置」と呼ばれるものだ。世界的な統一呼称としてはESC (electronic stability control)が推奨されているが、各自動車メーカーは其々勝手な呼称を用いている(例:ASC – 三菱、DSC – BMW・Mazda・Aston Martinなど、ESP – Daimler-Benz・Volkswagen/Audi・Peugeotなど、PSM – Porsche、VDC – 日産など、VSC – Toyota/Lexusなど、VST – Suzuki、CST – Ferrari、etc.)。スバルは、主としてVDC (vehicle dynamics control)と呼んでいるようだ。「横滑り防止装置」の働く仕組みは複雑であるが、例えば、右カーブで右にステアリングを切ってもタイヤが滑って曲がらない(即ち極端なアンダーステアに陥った)場合、運転者の意思や操作とは無関係にクルマが自動的に右前輪に(だけ特に強く)ブレーキを掛けると共に、必要であれば(例えば運転者がガス・ペダルを踏み続けている場合)エンジンの出力も絞って、クルマが右に曲がり易くしてくれる、というのが単純化した乱暴な説明の1例である。これは安全性を重視する上では非常に優れた仕組みだが、反面、スポーツ走行には不向きな(邪魔な)機構だ。何故なら、エンジンが回らない上に勝手にブレーキが掛かるので、クルマは止まる方向に向ってしまうのだから、ブンブンとエンジンを回しながらのダイナミックな走行とは対極の走りになるからだ。また、例えば雪道で車がスタックした際に脱出を試みる場合、駆動輪がスリップすると勝手にエンジン出力が落ちたりブレーキが掛かったりしてしまい、脱出に必要な車輪の回転が得難い不都合も起こり得る。従って、横滑り装置付きの車両は、装置の作動を任意に止められるスイッチも備えているのが普通である。

で、Y氏とオヤヂは氷上で滑るクルマの挙動を自らの運転操作で安定させる練習をしに来たのであるから、クルマが滑らないと話にならないし、滑り始めた途端にクルマが勝手に止まり始めても困るので、LegacyのVDCをオフにするスイッチを探した。ところが、借りたLegacyにはそんなスイッチはどこにも無かった。直ぐに判ったことだが、このLegacyは下位グレードなので(?)、そもそもVDCそのものが備わっていなかったのである(笑)。因みにタイヤは、ブリヂストンのBlizzak REVO1 (2007年製造)で、2世代前の設計な上に既にゴムが変性劣化している為、特に氷上では必要以上に良く滑った :mrgreen: 。何はともあれ、要するに借りたLegacyで問題なく思い通りの氷上ドラトレができたので、めでたしめでたし。

本日の女神湖氷上スポーツ走行への参加車両は十数台だったが、殆どの参加者はかなりの腕前。勿論、Y氏も相変わらずお上手で、定常円旋回も、外周ワインディング路のドリフト走行も、難なくこなしてしまう。それに比べて、オヤヂの運転のぎこちなさと言ったら… 😳 。まあしかし、Y氏の運転操作を参考にしながら半日もがき苦しんでいるうちに、オヤヂも次第に慣れてきて、ADE@Laplandの時の感覚や愉しさが蘇ってくると共に、今日の氷とクルマのコンディションに合致した運転操作がそこそこできるようになって来た。そうして、定常円旋回は、左回り(反時計回り)はほぼゼロカウンター/ニュートラルステアで”永遠に”回れるようになった。けれども、右回りは何故か楕円になってしまって、頻繁に修正舵を当てる必要がある侭だった。右ハンドル車で右回りだと、パイロンが近くに見え過ぎて、視線の調整が巧く行かないせいだと思うのだが、あとでS師匠にメールで相談したところ、以下の如き回答を戴いた:「スバル車は弱いアンダーでクルマの挙動が落ち着いておりドリフトしやすかったのではないでしょうか。左右で走りやすさが違ったのは、一つには運転席の相対的な位置関係からくる視線の違いもあると思いますが、もしかしたらリヤデフのリングギャの位置によるのかもしれません。デフに対してリングギヤの付いている位置によって、左右のスライドの仕方が異なるんです。一方の旋回方向では、内側のタイヤにもトラクションがかかっていて、安定してスライドする感じ。もう一方は、イン側のタイヤにトラクションが抜けやすく、突然スライド量が大きくなったり少なくなったりして安定しません。舗装路だと無視できる(サーキットのヘアピンなどでは違いが判ることがあります)レベルなのですが、氷上だと割とそうした違いが顕著に出るんです。アウディだとほとんど気にならないんですけどね。」

…ん~、なるほど、そうなのかぁ。本当にそれだけが理由だったなら、素直に嬉しい。けれども、Y氏は右旋回も左旋回も同じように綺麗な真円を描きつつ苦もなくやり続けていたから、やはりクルマではなく運転者の腕が一番の理由だろう。オヤヂの運転技術の未熟さを解っていながら、敢て他に原因を探して慰めてくださるS師匠、ここにも師匠の優しい人柄が端的に顕れている。S師匠、いつも有り難うございます。

畢竟、定常円旋回は、慣れてしまえばオヤヂでさえも(少なくとも左回りなら)簡単に回り続けられるようになったので、Y氏もオヤヂもやがては飽きてしまい、最終的には外周路のドリフト走行の方がずっと愉しく感じられた。ADEに参加し始めた数年前は、定常円旋回に酷く憧れて、定常円旋回実施可能な低μ路を自宅近くに建設してしまおうか、などと半分本気で考えたことすらあったのに…。尤も、特殊な条件下で、とあるクルマで定常円旋回ができたからといって、どんな条件下でもできる訳でもなければ、どんなクルマでも自在にドリフトコントロールができるようになった訳でも無く、単に自分の運転操作でクルマの挙動を能動的にコントロールする為の、スタートラインに漸く立つ事ができたという程度だ。今後も地道に精進し続けなくては… 😎 。

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