Lamborghini Track Academy in Imola

本日は、お待ちかねのLamborghini Track-driving Experience in Imolaの日だが、天候は生憎の雨(泣)。昨晩のパーティでも、最初の話題は天候で、ネットで降水確率の低い天気予報が見付かるまで、20以上のサイトをチェックしたよ、なんて輩も居たけれど、結局は大方の天気予報通り、朝からシッカリ雨が降った。昨日までは毎日晴れていたのに! と思うと悔しいが、嘆いていても仕方が無いので、朝食後にホテルをチェックアウトし、Volkswagen Passat 2.0 TDIでAutodromo Imolaに向う。

BolognaとImolaは60km程度しか離れていないし、ほぼ全行程で高速道路を使えるので、文字通りあっという間に到着。VW Passat 2.0 TDIは、際立つ速さは無いけれど、充分快適で長距離ドライブでも疲れ知らずで乗り切れそうな印象だ。唯一気になったのは、ディーゼル・エンジンの特性というよりは、恐らくギア比のせいだと思うのだけれど、4速/5速/6速ギアで”巡航”している際に、前車との車間距離が近付いた、とか、コーナーが迫ってきた、等の理由でエンジン・ブレーキを使いたくても、殆どエンジン・ブレーキが効かない事である。が、これは早目のスロットル・オフか、ちゃんとブレーキを踏む(笑)ことで対処可能なので、要するに慣れの問題だろう。街中の信号待ちやちょっとした渋滞のノロノロ運転では、頻繁に「アイドリング・ストップ」機能が働くが、エンジンが停止していても、クラッチ・ペダルを踏んだ瞬間に間髪を入れずにエンジンが掛かるので、全く気にならなかった。オートマチック・トランスミッション搭載車だと、ブレーキをリリースした瞬間にエンジンが掛かる、ということになるのだろうから、場合によってはタイミングに違和感を覚える時もあるのではないかと想像するが、アイドリング・ストップ機構は、マニュアル・トランスミッション搭載車にこそ向いているのかも知れない。

さて、すっかり前置きが長くなってしまったが、いよいよ本題(漸くかよ[汁])。Ferrariの本拠地(テストコース)でもあるAutodromo Imolaは、Bolognaにも増して激しい雨だった。それに寒かったぁ! Lamborghiniのインストラクタやスタップたちは、ダウンのベストやジャケットを着ていた程だ。オヤヂは、念の為に持って行った(けれども結果的に大活躍した)薄手のフリース・プルオーバーをTシャツに重ね着しただけで何とか凌いだけれどもね。

会場には、先頃発売されたばかりのAventador LP700-4が2台用意されていたのは勿論のこと、Gallardo系の車両も2輪駆動モデルのLP550-2系を除く殆ど全て(LP560-4, LP570-4 Superleggera, LP570-4 Spyder Perfomante)が揃っており、それらを乗り比べることができるという趣旨になっていた。 最初は、Gallardo LP570-4 Spyder Performante (Supperleggeraのオープンカー版)を使って、広場でハンドリングの練習。晴れていたなら、わざわざホースで散水して路面の摩擦係数(μ)を下げねばならないところだったが、お誂え向きの雨天だったので、滑る、滑る! ガス・ペダルをミリメートル単位で微調整しながら、(パイロン・スラローム +) パワー・オーバーステア→カウンターステア→コース復帰、を繰り返したが、570馬力のスロットル制御を極低μ路で行うのは、楽しいけれども困難だった(汁)。以前(例えば1年前)よりは、オヤヂも多少クルマの動きを能動的にコントロールする”感覚”が判ってきたので、インストラクタからは一応褒めては貰えたけれど…。

視界不良になるくらいの豪雨なので、当然、国際レーシングコースのコンディションも最悪。Autodromo Internazionale “Enzo e Dino Ferrari” Imolaは、あのAyrton Sennaが事故死したことで有名だが、他にもNelson Piquet, Gerhard Berger, Riccardo Patrese等のF1ドライバーがSennaと同じTamburelloでクラッシュしているし、Gilles Villeneuveがクラッシュしたことでその名を冠されたVilleneuveコーナーではRoland Ratzenbergerがセナの死亡直前に死亡しており、更に同じ1994年のSan Marino Grand Prixでは、練習走行中にRubens Barrichelloも最終コーナー手前のVariante Bassaでクラッシュしているといった具合に”危険な”サーキットなので、Lamborghini Track Experienceの主催者側は、なかなかオヤヂ達の本コース走行を許可してくれなかった。 仕方が無いので、展示車両のGallardo LP570-4 Super Trofeo Stradaleの運転席に座ったりしながら時間を潰したが、そんなことの為にオヤヂは時間とお金を掛けて遠路遥々日本からImolaにやって来た訳ではない! 雨が少し小降りになった隙にチョビッと走行してみては、やっぱり危ないから、とすぐに長い休憩時間に入ってしまうインストラクタ達(そして文句も言わずに優雅にコーヒーを飲みながら待ち続けるリッチな参加者達)に苛立ちを隠せなくなった貧乏なオヤヂは、耐え切れずに、とにかく走らせてくれぇ~ッと悲痛な叫びを上げてしまった。

すると、他の参加者とは明らかに異なるガツガツしたオヤヂの様子に驚きながらも、同情と憐憫の念を禁じ得なかったインストラクタ達は、コース専有時間終了間際に、オヤヂ1人だけ(マジだよ、マジ)が、先導車に続いてコース・インするのを、許してくれたのだ。モノは試し、言ってみるもんだねぇ! お陰で、自分なりの限界速度域(先導車はバックミラーでオヤヂの車を確認しながら速度調節してくれるので、オヤヂが速く走れば先導車も速度を上げてくれるのだ)でAutodromo Imolaの走りを堪能することができた。

その結果を踏まえてのオヤヂの感想を一言に纏めると、「よくこれ程の難コースでF1を開催していたなぁ…」ということになる。1994年までは高速コーナーであったTambrelloとVilleneuveは、死亡事故以来シケインに改修されているし、Variante Bassaも以前より緩やかなコーナーに変わってはいるが、上り下りもきついし、ブラインドコーナーも多いので、絶えず丁寧且つ正確な運転操作が求められ、とにかく気が抜けないのだ。豪雨で路面μが極端に低下してた為、ESP (electronic stability program) は絶対に切らせて貰えなかったし、e-gearのスイッチもcorsa (レイシング)モードは絶対に許可にならなかった(Normal→Sports→Corsaの順でシフト・チェンジの所要時間が短縮されるだけではなく、ESPの介入が遅くなる[≒車の挙動変化の自由度が上がる]為)。

実際、オヤヂはESPにしっかり助けられるシーンに何度も遭遇した。Gallardo系の車両を運転している時は、ちょっと強めのブレーキングをしながらコーナーに侵入する度に、ESPの介入を知らせるオレンジ色の警告灯が、メーターパネル内でチカチカと点滅し、ブレーキを残しながらステアリングを切り始めると、それでもESPの手助けだけでは足りずにクルマが横を向きかけるので、適度にカウンター・ステアを当ててやらないとならなかったりして、結果的には楽しかった。ESPが無ければ、オヤヂの腕では間違いなく即座にスピンをしまくっていただろうし、スピンしてコースアウトでもしようものなら、オヤヂもインストラクタ達も、「楽しかった」などと笑っては居られなかっただろう。ま、オヤヂとしては、今年始めの氷上ドラトレや、1-2回/月のペースでジムカーナ場やサーキットでそれなりにクルマを振り回す練習を重ねて来たことが、今回の雨天走行中の運転操作にも多少は役立ったと信じたいけれど…。

圧巻だったのは、Aventador LP700-4である。 今やLamborghiniのフラッグシップモデルの代名詞となっている、斜め上への跳ね上げ式のscissors doorを開けて運転席に座ると、そこは宛らジェット戦闘機のコックピットだ。ステアリグ・ホイールも何処となく飛行機の操縦桿を連想させるデザインだし、ライトやパワーウインドウ等の各種スイッチ類も、飛行機の操縦席を思わせるようなレイアウトで主としてセンターコンソールに集中して配置されている。 そして、エンジン・スタートボタンには、跳ね上げ式のカバーがつけられ、恰もミサイル発射ボタンの如しだ。その発射ボタンを押すと、700馬力の6L V12気筒エンジンは呆気なく始動する。

新開発の7速ロボタイズド・マニュアル・トランスミッション(今迄のe-gearと違うことを強調する為、ISR [Independent Shifting Rods]と呼ばれる)も秀逸。流行のツインクラッチではなく、シングルクラッチ機構ながら、実に滑らかで迅速な変速が可能だし、Corsaモードにすると、変速に要する時間は僅か50ms (100分の5秒でっせ、旦那!)。 残念ながら、CorsaモードはもとよりSportモードさえも許可して貰えなかったので、Normalモードしか体験できなかったが、Gallardo系のe-gearとは明らかに別物であることは、充分に判った。ステアリング奥のパドルを操作して、そのISRを1速ギアに入れ、ガス・ペダルを踏めば、この手の大型スーパーカーとしては異例に軽い(1575kg。10気筒エンジン搭載のAudi R8や、8気筒エンジンのAudi RS4, BMW M3等よりも軽いのだ!)車体は、雨で濡れた路面上でも矢のように加速する。勿論、軽く踏み込んだだけでESPの介入を知らせる警告灯が点灯しまくるが、そのお陰で、巨大な車体が姿勢を乱すことは一切無く、只管安定して雨の中を突き進むのみだ。高音域の音色に拘ってチューニングされた排気音を外で聴いていると、「ヒュィーン&ジュワーン!(擬態語で表現するのは困難)」と、まさにジェット機の離陸シーンのようだ。

ブレーキも素晴らしい。Gallardo系のブレーキは、お世辞にも良いとは言い難い(同じユニットを使用するAudi R8の方が、何故だか余程仕上がりが良い)が、Aventadorのそれは、世界最良のブレーキ・システムの1つに違いないと確信できるモノだった。専用開発(?)の20インチ Pirelli P Zeroのウェット性能の素晴らしさも手伝ってか、雨の中でもブレーキ・ペダルの踏力に応じた制動力を自在にコントロールすることができたし、ESPの介入を知らせる警告灯の点滅が嘘だと思いたくなる程に、車体は進行方向から微塵もずれることなく、ドッシリと安定した侭で狙い通りに減速してくれるのだ。

今回のAutodromo Imolaでの試乗で、生憎の雨天であったにも拘らず、Aventador LP700-4が、加速・減速・ハンドリングの何れを取っても現在最高のスーパーカーであることは間違いないと確信できた。一方で、先代のフラッグシップモデルであるMurciélagoが20世紀の遺物であり、現在の尺度ではもはやスーパーカーとは呼び難いことも間違いない。そして、Gallardo LP570-4 Superleggeraでさえも、”只のスポーツカー”に感じられてしまう程、Aventador LP700-4は素晴らしいのだ。しかし、価格が軽く4千万円を超えるのと、今すぐ注文しても納車は2年待ちらしいので、何れにせよオヤヂには縁の無いクルマである。

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