オヤヂはレーサーにはなれないナ

当たり前のことだが、オヤヂは自動車レーサーにはなれない。その当たり前のことが、この数日間で本当によく解った。このところオヤヂはずっと、PlayStation 3PS3)用乗用車運転シミュレイタのGran Turismo 5 Prologue(GT5)で、バーチャルの自動車レースを毎日体験している。PS3用GT5は本当に良く出来た運転シミュレイタなので、1日に数時間(!)GT5上で自動車を運転していると、バーチャルの世界とはいえそれなりに運転技術も向上してくる。そして、鈴鹿サーキットや富士スピードウェイでのレース(但し勿論市販車限定なので、飽く迄”スポーツカー”のレースであって、”レーシングカー”のレースではない)で比較的楽に優勝できるようになったりもする。しかしそれも、サーキットを2〜3周しかしない「短距離レース」での話だ。

GT5 Prologueの”最終ステージ(カテゴリーS)”では、サーキットを5周以上しなければならないレースが3つ設定されている。デイトナのオーバルコースを10周、富士スピードウェイを5周、そして鈴鹿サーキットを10周するものだ。この他に、出走車種指定のレースも幾つかあり、例えばFerrari 599に乗って、デイトナのロードコースを1周する間に前を走る15台を全て抜け!などという無謀なタスクもあったりするが、サーキットを1周しかしないので、全ての局面を只1度体験する(同じ場所は2度と走らない)だけだから、兎に角、ひたすら他車を抜きながら1週走りきることだけに専念すればよい。そして何しろFerrari 599は圧倒的に速いので、半周するまでに10台程度を抜ければ、優勝は不可能ではない。

だが、サーキットを数周以上するレースは全く違う。しんがり(最後尾)からスタートして、前を走る15台を全て抜くことが求められるのはいつも同じだが、5周乃至10周するうちに、(最終的に)先頭車に追い付き、追い越すことができるように設定されている為、途中は結構「”単独で”走りながら時々他車を抜く」、というような状況になる。即ち、周囲に邪魔者が居ない時には、理想的な走行線(レコード・ライン)を辿って圧倒的な速さで走り、やがて他車に追い付いたら、レコード・ラインを外れて(やはり圧倒的な速さで)抜き去り、再び走行を続ける、ということの繰り返しになる。これがしんどい(実に困難な)のだ。

嘗て、GT4(先代の運転シミュレイタ)で、レーシング・カーに乗ってル・マンのサルテ・サーキットを時速400kmで走行することが求められた際にも、タスクを何とかクリアはしたものの、その想像を絶する速度の凄まじさに圧倒されて、レーサーにはとてもなれないな、と思ったものだが、今回もまた、少し意味合いは異なるが、自分がレーサーにはなれないことを痛感した。Ferrari 599に乗れば、市販車なのにも拘らず、デイトナのオーバル・コースでは時速300kmを軽く超えて走ることができる。オーバル・コースの場合は、常時エンジンの最高出力付近を使って、最高速度付近で走行するのが基本なので、ブレーキを踏むことは基本的に無いが、ガス・ペダルの踏力をほんの僅かに緩めたり、ステアリング・ホイールを緩やかだが確実に切ったり、ということは頻繁に必要になる。そして、300 km/hを超えるような速度だと、単にエンジンブレーキをほんの少し使って、前方への加重移動が少し起きた(クルマの前輪への加重が増えた)ただけでも、ステアリング・レスポンスが大きく変るので、少しの操作ミスが大事故に直結してしまう。従って、基本的には楕円形のコースをグルグル回るだけの「簡単な」筈の走行なのだが、他車を時々抜きながら10周走り切ることは結構難しいものとなり、優勝はかなり困難だったりするのだ。

富士スピードウェイも、コースレイアウトは単純なサーキットなので、Ferrari 599での単独走行ならばタイムを出すのは比較的容易い。しかし、レコード・ラインを外れて他車を抜きながらの走行となると、難易度が大きく変る。しかも、ひとたびトップに立った後も、常にレコード・ラインをキープしながら例えば3周走る、というのは素人のオヤヂには非常に困難で、どこかで必ずミスを犯し、1度は抜いた車に結果的に抜き返されたりしながら、不本意な「死闘」を何周にも渡って繰り広げてしまったりするのだ。だが、それでもまだイイ。デイトナと富士では、Ferrari 599で優勝できたから。

問題は鈴鹿だ。このサーキットは、(NSXやNSX-Rの実車で何度も走ったことがあるので)オヤヂにとって思い入れが深く、GT4やGT5でも最も周回数の多いコースだ。調子がよければ、オヤヂの腕でもFerrari F430でも2分09秒台で1周できる。しかし、F430よりもストレートの速度が圧倒的に速い599でも、2分08秒台で回ることしかできない。Ferrari 599は”速過ぎ”て、オヤヂの操作(ブレーキ、ガス、ステアリング)が追い付かず、コーナでは599のパワーを生かしきれず、畢竟オヤヂの場合は599よりF430に乗った方がコーナリング・スピードは速い為だ。しかも、何周でも2分10秒を切って走り続けられるわけではなく、5周を超えると必ずミスをしてしまう。10周するのは本当に至難の業だ。随分と努力したのだが、599を諦めてオヤヂにとってはよりコントローラブルな(ミスを修正し易い)F430で3位でゴールし、タスクをクリアするのがやっとだった。僅か1分半ほどの時間(従って想像を絶する速度)で何十周もし続けられるF1レーサ−を始めとするレーサー達は、本当に凄い。彼らが年収数億〜数十億円を手にするのは当然だと、心底思う。

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