映画 ” The Queen “

映画” The Queen “を観た。主演のHelen Mirrenは、アカデミー賞主演女優賞を獲得して当然という見事な演技で、エリザベス二世女王を演じ切っている。個人的には、英王室にも日本皇室にも興味は無い。しかしこの映画を観た限りでは、職業選択の自由を謳歌し、好きで政治家(特に首相)に成った男やその妻・取り巻き連中と、女王という”職業”に就く定めを生まれながらにして負っていた女性とその家族との対比が、非常に興味深かった。

職業が人生そのものでもある女王もしかし、一人の人間であるから喜怒哀楽があるわけだが、そういった感情を闇雲に世間の目に曝け出す訳には行かず、王室の伝統や格式を傷付けたり崩したりせぬための、計算が働く。しかしそれは、女王としての責任や義務といった純粋な感情と少しの虚栄の帰結であって、悪意や野心とは凡そ無縁だ。だからこそ世論の対王室批判には人一倍苦悩する。一方で、首相とその周囲の人物達は押し並べて皆、野心と悪意に満ちている。ところが、女王の接見を受けたり電話で話したりするうちに、首相が女王に対して抱いていた先入観が次第に変化して行く様子が巧く描かれており、英国王室の国民に対する根強い人気の秘密を垣間見た気がした。勿論、この映画で描かれている女王(王室)像は、飽く迄も主演のHelen Mirrenや監督のStephen Frearsの解釈に拠るものだが、誰もが納得できる現実味を持った解釈だからこそ、非常に見応えのある作品に仕上がっているのだと思う。

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