Audi S5の至高の走りを堪能した

今日は早朝にHilton Munich Cityをチェックアウトし、一昨日に空港で借りたFord Focusを駆って、Audi Forum Ingolstadtに向かった。目的は勿論、新発売のS5を借りて2泊3日の旅に出ることだ。

オヤヂにとっては今日からの3日が、今回のドイツ旅行の主 題なので、今朝は(興奮気味で?)夜明け前から目覚めてしまい、妻に叱られた。MunichからIngolstadt迄は、70km余りの距離だが、 Munich市内を抜けるまでは朝の通勤ラッシュに巻き込まれて、思ったよりも時間を取られたのと、高速道路に入ってからも、非力で不安定なFocusで は120km/hを出すのも怖いと感じてしまい(日本にいる時のオヤヂからは想像不能の感覚だ)、「普通のドイツ車たち」にガンガン追い抜かれながら、畢 竟ホテルからForumまで1時間半を要した。

Forumは広大な敷地内の施設のごく一部で、隣接した工場や研究施設には3万1千人以上が働き、2千数百台ものAudi車たちが毎日24時間休み なく(工員は3交代制)生産され続けられているという、驚くべき場所だった。金髪美女の歓待を受けた後は、スーツ姿の禿親爺がRS4で敷地内及び工場内 (A3の生産部門)を案内してくれた。A3の生産は、塗装後の最終組立工程以外は、殆どがコンピュータ制御されたロボットにより賄われており、愕くほど清 潔で静かで広大、しかも無人の工場内でロボットたちが黙々と作業を続けると、約4時間に1台の割でどんどんとA3が出来上がってしまうのを見せられると、 いったいどこに3万人以上の人が隠れているんだろう?と自分の目と耳を疑いたくなる。映画「マイノリティ・レポート」でトム・クルーズが未来のLexus 生産工場に迷い込むシーンがあるが、Audiの生産工場は、スピルバーグ監督とスタッフたちが想像した近未来の自動車生産工場を、既に地で行っている感じ だった。

AVUSレストランで洒落た昼食を摂った後は、クルマ・オタク風の親爺が、Forum館内と歴史博物館内を案内してくれた。日本では手に入らない RS4のカブリオレやS3等が、Exclusive仕様で素敵な内装にカスタマイズされているのを見ると、なぜこれを日本にも輸出してくれないのかと、憤 りに満ちた質問をしたくもなったが、とにかく早くS5に会いたかったので、冴えない日本人夫婦に、不慣れな英語で精一杯沢山の情報を伝えようと頑張ってい る、人の良さそうな親爺のペースでの流れに任せた。

そしていよいよ、午後3時に憧れのS5と対面した。赤のレザーで彩られた内装を、Audiのイメージカラーの本流である銀色の外装で包んだS5は、 気品に満ちて堂々とした姿でオヤヂを迎えてくれた。Audi車を購入し、本社で引渡しを受ける顧客が毎日200人以上いるらしいが、その人たちが引渡しを 受けるのと同じ場所で、恰もS5をたった今買いましたよの如き状況で、貸借契約書類に3箇所サインをしただけであっさりと、金髪美女からキーを手渡され た。我々がIngolstadtに到着した後、程なくして雨が降り始め、午後は大雨と言ってよい天候だったが、そんなことはまったく問題にはならない。 だって、ガラス張りの巨大な建物内でクルマに乗り込んで、そのまま自動ドアをくぐって屋外に出られるのだもの。で、キーをステアリング・カラム横の「ホル ダー」(イグニッションではない)に差込み、RS4と同様センター・コンソールにあるエンジン・スタータ・ボタンを押す。至福の瞬間だ。…アレッ?何も起 きない。クラッチ・ペダルを踏みながら、何度ボタンを押しても、V8 4.2L FSIエンジンはうんともすんとも言わない。慌てて金髪美女に助けを求める。何のことは無い、ホルダーへの鍵の填込が甘かったのだ。気を取り直して、今度 こそエンジン・スタート! 出力をほんの少し抑えるためのデチューンをしてあるとはいえ、基本的にはRS4と同じエンジンとは信じ難い静けさで、S5のエンジンは目覚めた。さあ、6 速マニュアル・トランスミッションのギヤを右手で1速に入れ、発進だ。…アレッ?サイド・ブレーキ・レバーが無い!再び金髪美女をヘルプ・アイで見詰めて みると、A6のシステムと同一であることを教えてくれた。へえ、マニュアル・トランスミッション仕様でも、こんなインテリジェントな仕組みを付けられるん だ。だったらRS4にも付けて欲しかったなぁ…などとチロッと思いながら、極東の島からやって来たこんな猿にS5を貸す契約をしたのは間違いだったと後悔 しているのがミエミエの、金髪美女や親爺たちを残して、オヤヂの運転するS5はForumを出た。

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MMS(と呼ぶのだろうか?)は便利だと感じた。オヤヂのRS4には、インダッシュのカーナビが備わるだけだが、MMSの場合はインダッシュモニ ターによる地図表示のほか、メーター・パネル中央の簡易式ディスプレイとも連動して、(交差点での)進行方向が矢印で表示されるDIS機能が備わっている からだ。勿論(ドイツ語ではなく)英語だが、音声ガイダンスも節度ある親切さで好感が持てる。エンジン特性がRS4よりも穏やかなのと、ギヤ比がRS4よ りもずっと低目に設定されているようで、各ギヤでのエンジン回転数の上がりは「ジェントル」という感じだし、同じ速度だとRS4に比べてエンジン回転数は 1,000rpm近く低目に思えたが、アクセル・ペダルの踏み具合と加速感にはまったく違和感が無く、要するに思ったようにエンジン回転数が上がってくれ るので、ストレスは全く感じない。RS4の如き暴力的な加速感は無いが、それでも充分に速く、生憎の大雨にも拘らず、直線だろが曲線だろうがお構いなし に、矢のように突き進むことができる。ハンドリングも申し分無し。但し、RS4のステアリング・ホイールを握り慣れているオヤヂには、細身のS5のステア リング・ホイールには多少違和感があった。IngolstadtからGarmisch-Partenkirchenまでは180kmの道程だったが、制限 速度を気にせずに思い通りにS5を走らせることのできた2時間余りは、本当に楽しい、夢のような時間だった。

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