Vitz侮れじ!

先日、職場の同僚(非常勤職員)が、Toyota Vitzのカタログを持って出勤して来た。筆者はトヨタ社(=車)は嫌いだし、小型ファミリーカーにも特別興味は無いのだが、休憩室の机上に置いてあったそのカタログを、何気なく手に取って開いてみた。そして不覚にも驚いてしまった。筆者の車(Honda S2000)には付いているものの、日本車には珍しいと思っていたエンジン・スタータ・ボタン(ESB)が、何とVitzごときに装着されていることを発見したからだ。しかし、S2000とVitzのESBのコンセプトは、まるで異なる。

S2000_start.jpg Vitz_start.jpg

写真左はS2000の運転席の模様だが、ステアリング・ホイールの右側に写っている、赤いボタンがESBだ。S2000は1999年4月に販売が開始された大衆車であることも手伝ってか、ドアやトランク・ブースの施錠/開錠用のリモート・コントロール・システムは備えるが、キーレス・システムを備えるまでには至っていない(オヤヂの乗っているもう1台の大衆車Accordは、2002年10月販売開始のせいかキーレス・システム付だ)。従って、エンジンを始動させる際には、ステアリング・カラム右横の鍵穴に、まず鍵を差し込んでから、それをその侭右回りに捻ってやる必要がある。

しかし、S2000のエンジンはそれだけでは始動しない。クラッチ・ペダルを踏み込みながら(恐らく安全機構として?)、ESBを押してやる事が必要なのだ。これは、運転席(飛行機に准えて”コックピット”と呼ぶ人もいるが)に着座し、「さあこれから運転(=スポーツ)するぞ!」という気合を入れるための、一種の儀式であり、スポーツ・マインドを盛り上げるための演出である、ということになっている。実際、往年の英国スポーツ・カーはESBを備えていることが多かったようだし(?)、筆者もS2000を買ったばかりの頃はESBを押すのが楽しく思えたものだ。しかし、初期の興奮や感動が褪せた現在は、キーを捻り、クラッチを踏み、ボタンを押す、という3段階の操作が結構面倒臭く感じられる事もある。

一方、先頃モデルチェンジしたばかりのVitzは、流石に現代の車らしく、廉価な小型大衆車としては驚くべきレベルの装備が満載だ。その一例として、キーレス・システムが標準装備され、Accord同様に専用カードを携帯しているだけで、鍵を使うことなくドアの開閉やエンジン始動と停止が可能になっている。Accordと大きく異なるので筆者が注目したいのは、エンジン始動にはブレーキ・ペダルを踏みながらESBを押す(写真右)必要がある、という点だ。このESBはS2000とはコンセプトが全く異なり、必要だから備わっている、と言い得る。エンジンを始動させ(そして停止させ)るためには、鍵を鍵穴に差し込んで捻る操作に代わる何らかの操作が必要なわけで、それをシンプルなESBにした、ということだろう。これは筆者にとっては目から鱗というのか、コロンブスの卵的な発想だと思えたし、大いに感心させられた。Vitz侮れじだ。今後、トヨタとしては他の車種にも順次採用して行くだろうし、他社も真似をするのではないか? キーレス・システムの普及と共にESBも乗用車の標準装備となるような予感がする。

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