「畳…」の報道に思う

1週間ほど前、新聞やラジオなどのマスメディアで、畳の学習への効果に関する”研究結果”が一斉に報じられたことがあった。北九州市立大学農学部准教授の森田 洋 氏が、福岡市内の学習塾に通う学童300人余りを対象に行った”比較試験”の結果を取り上げた報道らしい。オヤヂは、森田准教授の学術報告/論文そのものを読んだ訳ではなく、その意味では研究そのものの詳細は不明だ。しかし、この報道自体には、非常に問題が多い。

報道に拠れば、”学習効果の判定”は、算数の計算問題を、単位時間当たりの回答数と正答率で見たものらしい。畳敷きの部屋と、非畳敷きの部屋で、学童に計算問題を解かせたところ、畳の部屋の方が回答数が上がったが、正答率は上がらなかった、と報じられている。そうして、畳敷きの部屋で”学習効果が上がった”理由としては、畳の色(が綺麗であること)や匂いによって気分が良くなり、集中力が増した、と考察されていた。

だが、もしも色や匂いが集中力を高めることが、学習効果の増強に繋がるのなら、壁や床の色を様々に変えたり、畳の匂いと同様の芳香剤を含めた様々な匂いを試して、最も集中力の高まる色や匂いを探ればよい筈だ。こういった試験方法は、農学よりは例えば心理学の分野で確立されているのではあるまいか?

また、何を以って学習効果を判定するのかも、もっと議論があってしかるべきだろう。高々1回の計算タスクの施行結果のみを云々することに意味があるとは、オヤヂは思わない。少なくとも、より長期間の繰り返し施行で効果を判定すべきだろう。しかも、回答数のみの増加であって、正答率は変わらなかったとなれば、今回の単回試験結果で有意な効果ありと言えるのがどうかさえ、疑問だ。また、”学習”とは、計算が早く正しくできるようにすること、のみではないことは、誰でも知っている。例えば、畳敷きの部屋と非畳敷きの部屋に於いて学童が何かの講義を受け、講義の学童の理解度に2つの部屋の間で差異があるかどうか、を検証する方が、余程”学習効果の判定”に向いていないだろうか?

一方、畳の需要が何故近年急速に減少したか、を考えてみた場合、日本の生活習慣が欧米化し、人々が畳敷きの部屋(に座布団や布団を敷く生活)よりも、板張りの床(に椅子や机、ベッドを置く生活)を好むようになった、ということの他に、所謂ハウスダストの軽減目的で畳を排除する動きが広がった点が見逃せないと、オヤヂは思う。畳の隙間には、塵や埃が溜まり易く、ダニなどの発生も招き易いため、喘息やアトピー(性皮膚炎)等の発症の一因になり得る、という知識が浸透してきたことから、日本の家屋から畳敷きの部屋が消えてきたのではなかったか?

更には、今回の報道では明言されていないが、「畳」は当然、新しい青畳であることが前提であろう。だとすると、学習効果を増強させる為に、頻繁に畳を新しいものと取替えねばならない=買い換えが必要、ということになる。畳がどれ程の価格のものなのか、オヤヂは全く知らないが、学童のいる一般家庭で、頻繁な畳の買換は、大きな経済負担にはならないのか?

こういったことを考えると、今回の報道は、畳業界(?)にとっては良いニュースであったに違いないが、我々一般人にとっては果たしてどれだけの意味を持つものなのかは、甚だ疑問だ。その内容が持つ意味や示唆する可能性を殆ど考察もせずに、安易に、しかも一斉に、報道しまくるマスメディアの性質に、オヤヂは憤りを感ずる。

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